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「岡っ引」日本医師会
小松秀樹(虎の門病院泌尿器科)

2010/02/15

こまつ ひでき氏○1974年東大医学部卒業。虎の門病院泌尿器科部長。著書に『医療崩壊「立ち去り型サボタージュ」とは何か』『医療の限界』がある。

予防接種法改正の議論
 新型インフルエンザを受けて、予防接種法改正の議論が厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会ではじまった。厚労官僚は、今回の新型インフルエンザ騒動での大失態を逆手にとって、組織拡大と権限強化に結び付けようとしている。

組織拡大
 第一の問題点は資料1の論点2-3。ワクチンの製造販売業者や卸売販売業者に協力を求める仕組みを導入するとしている。従来も護送船団方式で十分すぎるほど協力体制があり、逆に進歩の阻害要因として問題視されてきた。論点2-3を法律に盛り込むと、さらに国家事業色が強まる。製造方法やアジュバントなど新規技術導入で立ち遅れたワクチン業者に予算が投入される。天下りの促進要因になる。

 世界では次々と新しいワクチンが登場している。研究開発には莫大な費用と高度な技術が必要なため、国際的な巨大企業が開発の中心になっている。護送船団方式を守るための障壁で、日本人は世界で流通している有用なワクチンの恩恵にあずかれていない。

権限強化
 第2の問題点は論点2-4。臨時接種を国の指示通りに行っているかどうか、医療機関に対し報告を義務付け、状況によっては調査を行い、国が定めた優先順位に従わずに接種している医療機関を処罰するという。

新型インフルエンザ騒動
 日本の新型インフルエンザへの対応は、規範優先で実情に基づいていなかった。危機を煽って、世界の専門家の間で無意味だとされていた“水際作戦”を強行した。意味のない停留措置で人権侵害を引き起こし、日本の国際評価を下げ、国益を損ねた。

 医療現場のガウンテクニックの常識を無視して、防護服を着たまま複数の飛行機の機内を一日中歩きまわった。これによって、インフルエンザを伝播させた可能性さえある。知人の看護師は、ガウンや手袋の使い方を見て、唖然としたという。検疫の指揮を執った担当官に、非常時だから、医療現場の常識と異なっても黙っているように言われた。インフルエンザの防御と無縁のアリバイ作りだった。言い換えれば、現実より規範が官僚を動かしたように見える。

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