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年間70台しか通行できない高速道路に300台が突っ込んでくるとどうなる!?
ドラッグラグが深刻化した場合の責任は誰にあるのか
片木美穂(卵巣がん体験者の会スマイリー代表)

2010/02/18

かたぎ みほ氏○30歳の時に卵巣癌と告知され手術を化学療法を受ける。その後、友人がドラッグ・ラグの問題に直面したことをきっかけに「卵巣癌体験者の会スマイリー」を設立。18万筆あまりの署名を厚生労働省に提出し、ドキシル承認を訴えた。現在はドラッグ・ラグの根本解決を願って活動中。

はじめに
 卵巣癌体験者の会スマイリーは2006年9月、プラチナ抵抗性の再発卵巣癌の治療薬「ドキシル」「ゲムシタビン」「トポテカン」の早期承認を求めて結成された患者会です。2007年4月に署名2万8603筆、2009年1月に署名15万4552筆を厚生労働省に提出し、ドラッグラグ解消を働きかけ続けてきました。

 2009年4月にドキシルがやっと承認され、現在多くの患者さんがドキシルの投与をしています。卵巣癌は再発すると極めてキュア(完全に腫瘍が消滅すること)は難しいのですが、治療の選択肢が増えれば、それだけ治療を繋ぎ、1日でも家族のそばに長くいることができます。

 私たちが求めている抗癌剤は「未承認薬」ではありません。日本で他の部位(癌種)に承認されているのに卵巣癌には承認されていない、いわゆる「適応外」の治療薬です。

 先日、ゲムシタビンが、2月にも「再発乳癌」に対して適応追加されるというニュースが飛び込んできました。1999年の非小細胞肺癌の適応承認につづき、膵癌、胆道癌、尿路上皮癌と承認され、5番目の適応追加となります。

 それでも卵巣癌患者は使えません。現在は診療科の枠を超え、外来で化学療法を受けることが増えてきたので、「隣のベッドの非小細胞肺癌の患者さんがゲムシタビンを使っているのに、どうして自分には使えないのか!日本にゲムシタビンが無いならまだしも、隣のベッドに治療薬があるのに使えないなんて!」という患者の悲痛な声が届いています。

 2月8日に、厚労省で「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議有識者会議)」が開催されました。この件に関しては、「中央社会保険医療協議会中医協)」でも議論があったように(※1)、有識者会議で審議されることにより大変なことが起きるのではないかと、ドラッグラグに向き合う患者会として大変心配しています。

日本の治療薬の承認とPMDA
 まず、日本では、治療薬は、厚労省医薬局が承認し、保険局が保険適用した後に使われます。承認申請方法は、主に「通常の申請(治験をする)」「ブリッジング(少数の治験)」「104号通知(二課長通知、海外のデータなど公知の事実で申請)」などがあります。

 驚いたことに、二課長通知は、企業が「二課長通知で申請させてほしい」と頼むのではなく、研究開発振興課長と審査管理課長が「二課長通知で申請しなさい」と指示してくるものだそうです。研究開発振興課長と審査管理課長が治療薬の知識においてどのような資格をお持ちなのかわかりませんが、通知を読んでみてもその基準が明確ではなく、とても分かりづらいです。

 二課長通知以外で申請する薬は、治験が必要です。そして、治験薬は「医薬品医療機器総合機構PMDA)」に承認申請され、PMDAはそのデータをもとに承認審査されます。

 先にご紹介した中医協(※1)の議事を読んでみると、治療薬は年間およそ70成分が承認されています。治療薬はすべてが承認されるわけではなく、承認取り下げになるものもあるので、実際はもう少し多くの薬を審査官は審査し承認の可否を判断していると推測されます。PMDAのWebサイトに公開されている資料(※2)の54枚目をみると、年間およそ80品目以上の申請があり、現在審査中のものが150あります。

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