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「自治体病院は大赤字」というイメージが醸成されているともいえる
伊関友伸(城西大経営学部准教授)

2010/02/09

いせき ともとし氏○1987年埼玉県入庁。県立病院課、社会福祉課などを経て、2004年より現職。夕張市病院経営アドバイザーなど、数多くの国・地方自治体の委員等を務める。著書に、『地域医療 再生への処方箋』(ぎょうせい)、『まちの病院がなくなる!?』(時事通信社)など。

2兆円に及ぶ地方自治体の累積欠損金
 「○○市立病院の『累積欠損金』はXX億円で破綻寸前」。

 よく、このような記事が新聞に掲載される。実際の話、2007年の全ての自治体病院の「累積欠損金」は2兆15億円に達する。累積欠損金が200億円を超える都道府県は北海道(629億円)、山形県(290億円)、福島県(201億円)、千葉県(258億円)、新潟県(429億円)、愛知県(348億円)、兵庫県(768億円)、広島県(264億円)、宮崎県(249億円)、沖縄県(216億円)の10団体。100億円を超える都道府県は16団体と数多く存在する。果たして自治体病院は「2兆円の借金を抱えて破綻状態」なのか。「自治体病院の『赤字』は2兆円で破たん状態」という批判もあるが、これは正しいものなのであろうか。

費用として減価償却費の意味
 自治体病院など地方公営企業は、自治体の一般会計で採用している、ある期間の現金の出入りだけを記録する単式簿記と異なり、すべての費用及び収益を発生の事実に基づいて割り当てて記録する企業会計(複式簿記)を採用している。

 複式簿記は、主に「貸借対照表」と「損益計算書」の2つの表でお金の出入りを記録する。「貸借対照表」は、一定の時点(公営企業の場合は年度末の3月31日現在)での資産や負債の状況(ストック)を表したもので、資金がどのように調達され、運用されているかを表すものである。「損益計算書」は、一定期間の資金の出入り、すなわち一会計期間(公営企業の場合4月から翌年の3月31日までの1年間)にどれだけの収益を上げ、その収益を得るためにお金をどれだけ使ったか(フロー)を表している。

 地方自治体の一般会計では、当年度の現預金支出は、全額が当年度の費用になる。しかし、企業会計では、医療機器を購入した場合などは、現預金の支出があっても、その年度の収益の獲得に役立ったと考えられる部分だけが、その年度の費用として認められる。

 例えば50万円の医療機器を購入して、5年間で費用配分をする場合、毎年10万円ずつ費用として分配される。10万円の費用を差し引いた残りの40万円分は、「償却資産」として価値が残り、この償却資産の価値が毎年減っていくことで、その減少分を「費用」として把握し、配分が行われる(費用配分の原則)。

 この10万円分の費用分配が、損益計算書上の「減価償却」である。貸借対照表上の「償却資産」の価値を、費用分配により毎年減らしていくことにより、会計内に現預金を積み立てさせ(これを内部留保と呼ぶ)、建物や医療器械の再投資への原資を持つという効果がある。

 毎年のお金の出入りを把握する「損益計算書」において、収入である入院・外来収益、支出である職員給与費、材料費に対して、「減価償却費」は実際の現金の出入りを伴わない数少ない項目である。

 そして、費用として分配された減価償却費分の現金を確保できない場合、損益計算書において「純損失」が生じることになる。純損失は貸借対照表の資本の部にある利益剰余金と通算され、剰余金がなければ「未処理欠損金」となる。これが累積欠損金である。

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