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新型ワクチン集団接種出務記
長尾和宏(長尾クリニック院長)

2010/01/06

ながお かずひろ氏○1984年東京医大医学部卒業。市立芦屋病院などを経て1995年兵庫県尼崎市に長尾クリニックを開院、現在に至る。

 今回、一医師会員として新型インフルエンザワクチンの集団接種に出務しました。そこで感じたことを述べます。

当日の様子
 12月23日の天皇誕生日、私は尼崎市医師会による小学校3年生以下を対象とした新型インフルエンザワクチンの集団接種の初日に出務しました。患者数はすでにピークを過ぎて明らかに時期を逸しています。しかし国が決めた順番ですから仕方ありません。

 当日は午前の部、午後の部、夜の部の3部制で、医師会と保健所の2会場で集団接種が実施されました。私は保健所での午後の部(1時~4時)担当で当院の看護師同伴で出務しました。12月はじめに市報で募集したところ、たった2日間で3600人の募集枠が満杯になったそうです。

 私自身、MRICで「小学生には集団接種で対応を!」と主張し、11月に開催された「現場からの医療改革推進会議」でもそう発言しました。実際その通りの施策になり、その成否に責任を感じながら出務しました。医師会が主体となり集団接種することは尼崎市医師会始まって以来、はじめての出来事だそうです。

 3時間を1単位としてその間に約300人の子供達に安全に接種をすると仮定すれば、まず約20名以上のスタッフが必要です。接種医が2名、診察医が3名、問診の看護師が数名、診察介助や接種介助に看護師・保健師が6名、事務職員が数名、監督医が1名…。すなわち接種者に対して約1割ものスタッフが必要です。これだけのスタッフと万一のアナフィラキシーショックに備えて応急処置用の医療器具やAEDなどの医療器材も必須です。

 また、待合い場所、問診場所、診察場所、接種場所、経過観察場所など全部合計すると相当広いスペースが必要です。ワクチンさえあれば予防接種など簡単でしょう、という考えは誤りです。専門職を含む十分なスタッフ、医療器材、スペースの3拍子が揃って初めて集団接種が可能であることを再認識いたしました。医療には目に見えないコストがかかります。

接種不可とした事例
 私自身、約100人の子供たちを予防接種可能かどうか診察しましたが、うち4人に接種不可の判定をしました。4人のプロフィールは

1) 中等度の卵アレルギーの子供さん。軽度なら接種しますが、中等度以上は接種できません。母親はかかりつけの小児科医からは接種可能と言われていると主張されましたので、そちらで接種して頂くことしました。

2) 昨日まで高熱があった子供さん。一昨日は39.6度、昨日は40度。医者には行かず本日は平熱でそこそこ元気そうです。こういうケースが一番困ります。もしかしたら新型インフルエンザかもしれません。とりあえず今日の接種は中止しました。

3) 風邪が治り切っておらず肺雑音がある患者さん、2人。

以上の4人は接種中止としました。その他、2週間前に「A型インフルエンザに罹患したが季節性だった可能性があるので受験も控えており念のため接種しておきたい」という子供さんが2人いました。親と話し合いの結果、1人は接種しないことに、1人は接種することに決定しました。これも以前、MRICで指摘したとおりの出来事でした。ワクチン接種に関わる有害事象を防ぐには、このような問診と診察が必須です。

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