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再びボールは医療界に投げ返された―川崎協同病院事件最高裁決定を受けて―
大磯義一郎(国立がんセンター中央病院医師・弁護士)

2009/12/29

 本件は今から11年前(平成10年)に起きた事案である。気管支喘息の重積発作により心肺停止状態で搬送された患者に対し、蘇生は成功したものの、入院より2週間が経過しても意識が回復しなかったことから、家族の要請を受け抜管したところ、患者に苦悶様の症状が強かったことからセルシン、ドルミカムを点滴静注、なおも改善しないため、同僚医師の助言によりミオブロックを点滴静注したという事案である。事案から4年後、病院内の内部紛争を契機ににわかに騒ぎが発生し、医師の退職を経て、平成14年4月に病院が記者会見を行い世間に知られることとなった。

 当時の世間の風潮から検察も動かざるを得ず、刑事事件として起訴され、平成17年に地裁判決(懲役3年執行猶予5年)、平成19年に高裁判決(懲役1年6月執行猶予3年)を経て、本年12月7日最高裁判所(第三小法廷)による上告棄却(高裁判決の維持)の決定により本件の刑事司法における決着を迎えることとなった。

 しかし、一人の医師が刑事裁判にかけられ、11年もの年月が経過したにもかかわらず、終末期医療を取り巻く医療現場の環境には全く変化がなく、日常臨床で日々直面する課題は解決されないままである。

 本稿では、最高裁決定の法的解釈を中心に論評するものである。今後、司法からの強いメッセージを受けて、医療者を中心とした更なる発展的な議論がなされることを強く望むものである。

2.最高裁決定
 まず、最高裁判所は、本件の上告につき、刑事訴訟法に定める上告理由に該当しないとして上告を棄却するとした(いわゆる三行半判決)。その上で、本件の社会的重要性に鑑み、傍論として以下のように判示した(アルファベットは解説のために付したものである)。

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