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新型インフルエンザワクチン接種後の早期死亡事例を検証する
上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)

2009/12/16

かみ まさひろ氏○1993年東大医学部卒業。99年東大大学院医学系研究科修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院を経て2005年10月より現職。

※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media)12月2日発行の記事(「現場からの医療改革レポート 第45回『新型インフルエンザワクチン接種後の早期死亡事例を検証する』」)を加筆・修正したものを転載させていただきました。

 12月11日発売の『週刊朝日』に「新型インフルエンザワクチン接種後26人死亡 「死にすぎ」の怪」という記事が掲載されました。岩田智博さんという記者が書いたもので、私も取材に協力しました。私の知る限り、マスメディアが、高齢者への新型インフルエンザワクチン接種の危険性を指摘したのは、これが初めてです。

 実は、私自身、皆さんにお詫びしなければならないことがあります。私は、これまでの連載で、持病を持つ高齢者は、新型インフルエンザに罹ると致命率が高いため、ワクチンを打つべき、また、確実に免疫を獲得するために、1回よりも2回接種が好ましいと主張してきました。ところが、実態は、そんなに簡単ではなさそうなのです。

新型インフルエンザワクチン予防接種後副反応検討会
 私が驚いたのは11月21日に厚労省で開催された「新型インフルエンザワクチン予防接種後副反応検討会」と薬事審医薬品安全対策部会安全対策調査会の合同部会の資料を読んだからです。

 当初、この委員会に関する報道は、専門紙ですら「新型ワクチン『安全性は十分』」「死亡例「ワクチンとは明確な関連なし」」(医事新報 11.28号)でした。マスメディアも同じような論調でしたから、多くの国民は、「国産の新型インフルエンザワクチンは安全だ」と考えたと思います。

 ところが、委員会に提出された資料や、委員の発言を読む限り、どうもマスメディアの論調はおかしいのです。新型インフルエンザワクチンは、概して安全ですが、一部の人々には危険な可能性があります。

 まず、この検討会ではワクチン接種後早期になくなった21例が報告されています。このうち、19例で調査結果が報告されています。注目すべきなのは、19人全員が何らかの基礎疾患をもち、17例が70歳代以上の高齢者であることです。また、14人がワクチン接種後2日以内、7人は接種後24時間以内に死亡しています。つまり、「持病を持つ高齢者には新型インフルエンザワクチンの接種は危険」な可能性があるのです。

 余談ですが、今回の死亡報告が氷山の一角である可能性は否定できないものの、これまでの死亡例が「持病をもつ高齢者」に限定されていることは朗報です。すでにワクチン接種を受けた妊婦、持病をもつ若年者、幼児・小児では、致死的な副作用が起こる可能性は低いと推論できるからです。

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