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事業仕分けへの疑問
伊関友伸(城西大経営学部准教授)

2009/12/03

 行政刷新会議による事業仕分けは、世の中の大きな関心を集めた。ただ、筆者は、一部で懸念が示されているように、財務省主導の予算削減の結論ありきの非常に乱暴な政治ショーと感じている。

 筆者は、地域医療や自治体病院の経営を中心に研究しているが、以前は、行政評価を研究していた。行政の質を高めるためには、外部の人間が入り、評価を行うことも必要だ。しかし、外部の人間が、具体的な行政の活動について持っている情報は少ない。評価という作業は、価値的な作業だ。評価を出来るだけ客観化して数値で表すために、政策の実現による便益を金銭化し、費用と対比して評価する方法(費用便益分析)や、その価値を守るためにお金をどれだけ支払って構わないかを金額で評価する方法(仮想評価法)などもある。

 しかし、全ての行政活動を絶対的に評価する手法はなく、限界がある。絶対的な評価の基準がない中での外部者の評価は、「コストに対する事業効果が出ていない」という決めつけがしやすい。その結果、事業を廃止や予算削減をすべきという結論につながりやすい。

 そして、単に「予算削減」をするだけでは、問題の本質的な解決につながらない。問題の本質的な解決のためには、担当者と外部者の議論の中で、問題が起きている本質を深く掘り下げることが必要となる。特に、診療報酬のあり方というテーマは、一国の社会保障のあり方を議論するもので、様々な要因を複合的に議論すべきであり、予算の支出が少なければ少ないほど良いというわけではない。

 今回の事業仕分けの場合、資料が財務省から出され、非常に少ない時間で、悪者=事業を行う官僚、正義の味方=仕分け人という舞台設定の中で、一方的に仕分け人が官僚を叩き、必要な予算まで削減するという構図になっている。これでは、具体的な事業を行う官僚から、根本的な問題解決の情報が出ることはなく、議論が深まることはない。

 実際、今回の事業仕分けでは、「診療報酬の配分」に関し、勤務医と開業医、あるいは診療科間の給与格差を平準化すべきで、「見直し」をすべきとされた。「医師確保、救急・周産期医療対策の補助金等」についても予算要求の縮減を支持する意見が多数を占め、2010年度予算要求額が半額に縮減された。

 財務省は、事業仕分けの結果を踏まえ、今回の診療報酬改定で、診療報酬本体のマイナス改定を求めるようだ。現場を回れば、開業医も、多くは自民党政権時代の医療費抑制政策の影響で、収入は落ちている。開業医を悪者にして、大幅に診療報酬を下げれば、最初に、地方の高齢化している開業医が廃業して、地域医療が崩壊するリスクがある。そういうリスクを想定して、事業仕分けの議論は行われていない。全国各地で医療崩壊が進む中で、本当に、このようなやり方で政策が決定されていくのが良いのか疑問に思う。

 事業仕分けに見られるように、財政削減第一で、官僚=悪と決めつけ、劇場型で相手を否定するやり方は小泉政権と手法と全く同じである。「医療費=悪」、「医師=もうけすぎで悪」と悪者を作り、行きすぎた医療予算の削減が行われ、日本の地域医療を崩壊させたことが、また繰り返される危険性が高いように思われる。このようなやり方がまかりとおるのであれば、「民主党=ネオ小泉政権」と言わざるをえない。

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