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いわゆる混合診療の法解釈論
井上清成(弁護士)

2009/12/30

いのうえ きよなり氏○1981年東大法学部卒業。86年に弁護士登録、89年に井上法律事務所を開設。日本医事新報に「転ばぬ先のツエ知って得する!法律用語の基礎知識」、MMJに「医療の法律処方箋」を連載中。著書に『病院法務セミナー・よくわかる医療訴訟』(毎日コミュニケーションズ)など。

混合診療という不適切な用語
 混合診療という法令の明文はない。混合診療というと、混ぜ物(雑ぜ物)というイメージがつきまとう。その語感をもとに議論すると、ともすれば感情的な議論になってしまうかも知れない。そこで、併用療養のような法令に基づく用語での分析と議論をした方がよいと思う。

併用療養は併合療養
 健康保険法第86条に保険外併用療養費制度の定めがある。「併用療養」という用語が登場するが、この用語は厚生労働省がかねてから主張している「不可分一体論」に基づく。「医療行為は、様々な作用を及ぼす侵襲行為であるから、複数の医療行為を行う場合には、複雑な相互作用を生じさせるおそれがあり、これを単純に複数の医療行為が併存しているとみることができず、複数の医療行為を併せて不可分一体の1つの新たな医療行為がされているとみるべきである」というのが不可分一体論である。

 不可分一体論を表現するならば、「併用」よりも「併合」の方が直截的であろう。併用療養とは、併合療養のことなのである。

併存療養もしくは追加療養
 しかし、「単純に複数の医療行為が併存している」場合もあるかも知れない。もしもそうだとしたら、それは併存療養もしくは併行療養と表現するのがよいように思う。健康保険法上の「療養の給付」に上乗せする意味も込めるとすれば、むしろ追加療養もしくは付加療養と称する方がわかりやすい。

 併存療養にしても追加療養にしても、法令に明文がないのは大前提である。ただ、これらの用語は、不可分一体論に対比して、可分なものであることを表現するのに適切だと思う。

不可分型と可分型
 まとめると、併用(併合)療養は不可分型を意味しており、併存(追加)療養は可分型を意味している。理念型としては、不可分型と可分型が存在しうるといってよいと思う。

 問題は、現実に、可分型が存在するかどうかである。まず検討すべきものとしては、産科における異常分娩があろう。出産における正常分娩は自由診療(保険外診療)であることは争いがない。ところが、それが異常分娩になったり、帝王切開になったりすれば、保険診療(療養の給付)が入り込む。すると、その場合は、自由診療と保険診療の可分型と評しうるようにも思う。

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