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新型インフルエンザワクチンは、何回打てばいいのか?
上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)

2009/10/29

かみ まさひろ氏○1993年東大医学部卒業。99年東大大学院医学系研究科修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院を経て2005年10月より現職。

※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media)で10月21日に配信された記事(「『絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート』第42回 新型インフルエンザワクチンは、何回打てばいいのか?」)をMRIC用に改訂し、転載させていただきました。

 新型インフルエンザの流行が急速に拡大する中、予防接種が始まりました。医療現場はワクチン接種の準備に大慌てです。ワクチンの供給が十分でないため、多くの病院では、全ての医療従事者が接種を受けることは出来ません。また、厚労省の方針では、事務職員は接種対象外のため、彼らが新型インフルエンザに罹れば、休診せざるをえない病院が出てくることが予想されます。

【新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会】

 ここにきて、さらに病院を混乱させる事態が生じました。それは、16日に厚労省で開催された「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」でのことです。その議論内容は、当日の夕刊、および翌日の朝刊で広く報道されたため、ご覧になった方が多いでしょう。産経新聞によれば、「厚生労働省の専門家会議は16日、免疫が上がりにくいとされる「1歳から13歳未満の小児」以外は原則1回接種とすることで合意した。」とあります。

 この結果、「2回接種を想定した場合の2700万人分から大幅に増加し、4000万人分の国産ワクチンが確保されることになる(産経新聞)」となったようで、多くの国民は吉報と感じたでしょう。

【厚生労働省の専門家会議が合意した根拠は?】

 果たして厚労省の言い分は、科学的に妥当なのでしょうか?どうして、突然、以前は2回打たねばならないと言われていたワクチンが、1回でよくなったのでしょうか?結論から申し上げますと、厚労省が下した結論は医学的に無理がありました。

 この意見交換会で、厚労省はアメリカ、オーストラリア、そして日本で実施された3つの臨床試験の結果を提示しました。このうち、オーストラリアと日本の臨床研究では、アジュバントを含まない同じタイプのワクチンが用いられていて、研究デザインも似ているため、日本での議論の参考になります。

 日本では、本年9月に20~50歳代の健康な男女200人を対象に臨床研究が行われました。全体を二群にわけ、それぞれに対して、通常量、および倍量の国産ワクチン(北里研究所製)を接種し、3週間後に抗体価を調べました。その結果、1回分のワクチン量を打った96人のうち75人(78%)、倍量を打った98人では86人(88%)に効果が確認されたといいます。

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