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新型インフルエンザワクチンの接種開始を目前にして
森兼啓太(東北大学大学院医学系研究科感染制御・検査診断学分野)

2009/10/19

もりかね けいた氏○1989年東大医学部卒業。国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官、アメリカ疾病制御予防センター(CDC)客員研究員などを経て2009年7月より現職。

 新型インフルエンザワクチンが医療機関に届き、医療従事者への接種が始まる。様々な紆余曲折はあったが、新型インフルエンザ発生以降6ヶ月足らずでどうにかここまでこぎつけられたことに関する関係諸方面の方々の努力にまず敬意と感謝の意を表する。

 ワクチンの接種体制や製剤の詳細については、すでにMRICにおいて東京大学の上昌広氏神戸大学の岩田健太郎氏が包括的かつ詳細に記述しているので、両氏の稿をご参照願いたい。本稿では筆者が問題だと感じることについて箇条書きで述べる。

(1)医療従事者へのワクチン接種が有料である点

 厚労省のワクチン接種の基本方針(2009年10月1日)によれば、今回のワクチン接種の目的は死亡者や重症者をできるだけ減らすことであり、これには死亡や重症化のリスクをもつ人(乳幼児、妊婦、呼吸器系や循環器系などの基礎疾患をもった人など)の個人防御を目的としてそれらの人々を対象に優先接種する。

 一方、患者が集中発生することによる医療機関の混乱を防ぎ、必要な医療体制を提供することが第2の目的にあがっている。つまりインフルエンザの診療に必要な医療体制をとぎれなく提供することにより、入院する人が重症化したり死亡したりすることを少しでも少なくするよう、必要な医療を提供する、ということである。

 このためには、医療従事者が市中の流行のさなかにその影響を受けて多くが感染し欠勤することがあっては困る、だから医療従事者には優先してワクチン接種を受けてもらう、ということである。医療従事者が発症して患者を感染させることを防止するのが目的ではない(それが目的であれば医療従事者が市中流行の間全員サージカルマスクを着用すればよい)。

 これらのことから明らかなように、医療従事者は個人防御を目的として優先順位が高くなっているわけでもなく、医療を提供するために(国民のために)接種を受けるのである。このために費用をなぜ医療機関または医療従事者自身が負担しなければならないのだろうか。このことに関する説明が医療機関や医療従事者に対して行なわれているという話を筆者は寡聞にして知らない。

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