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「がん対策基本法」施策と矛盾する在宅車両の取り締まりへの提言
「緑虫」との闘い
長尾和宏(長尾クリニック院長)

2009/10/01

ながお かずひろ氏○1984年東京医大医学部卒業。市立芦屋病院などを経て1995年兵庫県尼崎市に長尾クリニックを開院、現在に至る。

【政権交代した今こそ矛盾の解決を】

 人間復興か、はたまた医療費抑制政策か。おそらく両方の意味でしょう。国を挙げての在宅医療推進が謳われています。07年に制定された「がん対策基本法」では「がん患者の意向を踏まえ、住み慣れた自宅や地域での療養を可能とする」とし、「在宅での療養と看取り」を勧めています。

 しかし当院のような都市部では在宅車両を標的にした理不尽な駐車違反取り締まりが連日行われています。その結果、在宅医療の日常業務に支障をきたしスタッフのモチベーションを大きく損ねています。警察や行政関係各方面に働きかけても解決の糸口が見えず、大変困っています。政権交代した今こそ、政治主導による縦割り行政の打破による問題解決を期待します。

【取り締まりの実態】

 09年5月のGWの真最中、阪神間のある在宅医から嘆きのメールが流れました。「在宅看取りのため緊急往診したわずか20分間にヤラレタ!」と。駐車禁止除外票を提示して明らかに邪魔にならない場所に止めたのですが無駄だったそうです。在宅療養支援診療所は365日、24時間対応を義務付けられています。しかし休日返上で一生懸命に緊急対応した結果が犯罪者扱いなら、誰でも落ち込みます。

 多くの人は、「たかが駐車違反だろう。駐禁除外票を提示して上手く停めればいいだけなのに何を大げさに」と思われるでしょう。しかし、「駐禁除外票より道路交通法が優先する」という原則のため駐禁除外票は、当院のような都市部では多くの場合、効力がありません。

 付近に駐車場があれば当然利用しますが、近くに駐車場がない場合が多く、仕方なく迷惑にならない場所を探して、少し歩道に乗り上げたり、やや広い一方通行で左に民家の入口がある場合は仕方なく右側に駐車しますが、これらは全部アウトです。

 私自身も毎日が、路上駐車取締員との追いかけっこです。緑色の制服を着て2人ひと組みで町中をウロウロしている彼らは通称「緑のおじさん」、ないしは誰が名づけたのか「緑虫」と呼ばれています。路上で「緑虫」と口論になったり、取り締まりが気になって患者さんと十分に話せなかったり、運悪くたった5分で捕まって落ち込んだり、ショックで辞表を出す職員の対応に追われたり…。もはや「緑虫」抜きで日常が語れなくなってきました。

 当院は複数医師で外来診療と並行して在宅医療を行う、いわゆるミックス型診療所です。この2年半を振り返ってみて、当院の在宅医療車両の駐車違反摘発件数は恥ずかしながら2007年:1件、2008年:5件、2009年:7件の計13件でした。

 職種別では医師4件、訪問看護師7件、訪問リハビリ2件でした。違反事由としては、右側駐車:3件、横断歩道付近:1件、駐車場出入付近:2件、消火栓付近:1件、歩道乗り上げ:2件、左側0.75m違反:1件、その他:3件でした。一番よく使う中古の軽車両は07年1件、08年2件、09年1件とすでに4回捕まり、地元警察署からリーチを宣告されています。

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