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本当に接種できるのか?課題山積の新型インフルエンザワクチン
森兼啓太(東北大大学院医学系研究科感染制御・検査診断学講師)

2009/09/14

【はじめに】

 新型インフルエンザワクチンの接種に向けた動きが活発化してきた。厚労省はようやく先月から何度も意見交換会を開催し、様々な立場の人から意見を聴取した。9月4日、マスコミ各社に優先順位や輸入ワクチンも含めた「新型インフルエンザワクチン接種のあり方」の案を提示し、同時にパブリックコメントの募集を開始した。

 2005年に新型インフルエンザ対策行動計画が策定され、その後改定されてきた。付随するガイドラインも策定され、同様に改定されてきたが、ワクチン接種のありかたについては、不明確な要素も多いこと、および優先順位付けイコール人の命の軽重の判断という批判への恐れなどから、十分に議論がされてこなかった。

 今回の新型インフルエンザである2009年インフルエンザA(H1N1)に関して、ようやく様々な情報が集積されてきた。その結果、季節性インフルエンザでは毎年多くの感染者が出る高齢者にはあまり患者発生がなく、逆に10歳代あるいはその前後の世代の若年者に感染者が多いこと、妊婦や小児、基礎疾患をもった人たちの重症化リスクが高いこと、などがわかってきた。

 これらの特徴に基づいて、今回の案では、妊婦や小児、基礎疾患をもった人たちをワクチン接種の高い優先順位に据えている。また、新型インフルエンザの流行の際に医療機関で欠勤者が多く出たり、医療従事者から患者に伝播したりすることも好ましくないので、医療従事者も同じ優先順位に据えられている。

 さらに、小中高生など罹患のリスクが高い(重症化のリスクは高くない)人たちに接種することによる流行の抑制も一つの選択枝であると記し、これらの集団を第二順位としている。順位付けは極めて妥当な線であり、議論が落ち着くべきところに落ち着いたという印象を受けた。この間、短時間で何度も会議を開催し意見聴取を行なって接種順位の案をまとめた、厚生労働省などの関係者に敬意を表したい。

【優先順位の次にくる議論】

 優先順位に関する議論は落ち着いたが、実際にワクチンが接種されるまでのプロセスには問題が山積している。昨日(9月9日)、都内で行われた専門家や団体代表者などを交えた意見交換会では接種優先順位案について異議を唱える人はおらず、ほとんどの議論がそれ以外の部分に関するものであった。その中でも特に重要だと筆者が考える、3つの課題を以下に示す。

(1)ワクチン接種体制:特に、どこで誰がワクチンを打つか

(2)輸入ワクチンの確保

(3)輸入ワクチンの使用の必要性

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