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「新型インフルエンザ対策」が爆発的流行を引き起こす
木村知(有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役、医学博士)

2009/09/11

 夏休みが終わった。厚労省は夏休みが終わる一週間ほど前に再び改正省令を出し、「新型インフルエンザ」の感染症法に基づく医師の届け出を不要とした。これでようやく「新型インフルエンザ」はわれわれ現場の臨床医にとって「いつものインフルエンザ」になった。

 正直そう思いたかったが、夏休みを終え、むしろ現場の状況はますます深刻になってきているということを、先日痛感させられる事態に遭遇してしまった。そして、このような現状では「新型インフルエンザ」のいっそうの感染拡大は、もはや避けられないと考え、今回緊急記事として現場の実情を報告させていただくことにした。

 夏休みも明けて2~3日経ったある日、いつもの診療所に行くと、そこは真冬のピーク時とはいかないまでも、いつものこのシーズンとは明らかに違う混雑となっていた。特に午前中は、1時間あたり約40人の受診者がおり、その約半数は「カゼ症状」や「発熱」といった「急性の患者さん」であった。

 もちろんいわゆる「インフルエンザ様症状」を呈する患者さんも若干名おられ、1時間に1~2人ペースで「A型陽性」患者さんが発生したのであるが、これはこの診療所の真冬の状況からすれば、まだほんの少数であり、これら「急性の患者さん」のほとんどは、むしろ軽微なカゼ症状での受診者であった。

 小児など、もともとコンビニ受診をする患者さんは多いのだが、あまりに例年の雰囲気と違うため、「37度の発熱のみ」で小学生を連れてきたある母親に、今回の受診理由を問うてみた。すると、まさに耳を疑う意外な教育現場の現状を知ることになったのである。「毎朝登校前に検温をして、体温37度以上なら学校を休んですぐ病院に行き、新型インフルエンザでないことを確認してもらってから登校するように」。その子の通う小学校では、このように指導されているのだという。

 また昼過ぎにやって来た、いかにも元気そうな別の中学生は、「授業中咳をしていたら、保健室に行くようにいわれてしまい、そこで検温をしたところ37度と出たのですぐ早退させられ、その足でここに来ました。でも1時間以上も待って疲れちゃいましたよ」と当の本人も、なぜ元気なのにここにいるのか腑に落ちない様子であった。

 そのほか、授業中の急な発熱の小中学生や、仕事中の咳を指摘されてあわてて退社してきた一流企業のサラリーマンなど、受診者の多くは典型的なインフルエンザ様症状を呈していないか、もしくは症状発現ごく早期の状態であった。

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