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舛添厚生労働大臣に直談判した卵巣がん患者の願い
適応外治療を受けたいという願いはわがままなのでしょうか
片木美穂(卵巣がん体験者の会スマイリー代表)

2009/09/03

 「何ができるかわからないけれど舛添厚生労働大臣に会ってくるよ」。松島麻子(仮名)さんは、静かに、でも覚悟を決めたように力強く言いました。

●卵巣がんについて

 卵巣がんは1年間で約8000人が発症し、約4500人が亡くなる婦人科がんの中でも極めて予後が悪いがんです。自覚症状が出にくく検診で発見するのも難しいことから、多くの患者が進行がんになった状態で発見されます。そのため、抗がん剤治療が不可欠です。

 標準治療(ファーストライン)としては、タキソールとカルボプラチンの併用療法が世界中で行われており、日本も同様です。しかし、日本では、カルボプラチンやシスプラチンといったプラチナ製剤に耐性などが起きたときに、選択肢が少ないのです。世界で卵巣がんのセカンドラインとして使用されている「トポテカン(ラグ13年)」、「ドキシル(ラグ10年)」、「ジェムザール(ラグ3年)」が、2009年4月22日にドキシルが承認されるまで「適応外」という状態でした。

●厚生労働大臣面会の背景

 麻子さんは、当会の会員の中でも一番の勉強家で、プラチナ製剤に耐性が起きたときの治療法が少ないという現状をとてもよく理解していました。麻子さんは2008年10月15日に当会がドラッグ・ラグ解消の署名活動を始めたときに、大学時代の友人に積極的に声をかけました。大学時代に弁論部に所属していた麻子さんの友人の多くは、国会議員・地方議員として活躍しています。卵巣がん患者が置かれている現状に驚いた仲間が麻子さんのもとに集まりました。

 11月の初めに舛添厚生労働大臣に麻子さんが直接会えることになりました。麻子さんに、同行してほしいと声をかけていただきましたが、署名活動のまっただなかで連日マスコミなどの対応に追われて調整がつきませんでした。大臣に会うまで、毎日のように麻子さんと電話で打ち合わせをしました。不安な時も、「私がマスコミのみなさんに報道をしていただき空中戦をする。麻子さんが、大臣に直接卵巣がん患者の現状を訴える地上戦だね」といって励まし合いました。

●再発卵巣がん患者の現状と「ジェムザール」

 麻子さんは、再発後の抗がん剤治療がいずれも効果がみられず、当時治療に使っていた抗がん剤は副作用も強く、辛い思いをしていました。しかしその治療を受けなければ「もう手が無い」状態でした。

 私たちがセカンドラインとして求めるうち、「ドキシル」はマスコミの報道などが後押しをし、2007年11月に迅速審査になり、近い将来に承認されるだろうということでした。そのような背景から麻子さんが強く望んだ薬が「ジェムザール」でした。

 「ジェムザール」は日本では、非小細胞肺癌、膵癌、胆道癌、尿路上皮癌に対して承認されています。卵巣がんに対しては世界約60カ国で承認されており、複数の海外の無作為化比較試験等の公表論文で有効とされています。NCCNのガイドライン、日本の卵巣がん治療ガイドラインにも再発卵巣がん治療の選択肢として記載されている抗がん剤です。

 麻子さんは再発後、セカンドオピニオンに訪れた病院で「数か月ごとの刻みにはなるかもしれませんが、抗がん剤治療をうまく組み合わせていけば、やがてドキシルが承認され、その次の手がでてくるかもしれない。頑張りましょう」と言われていました。それは、治療を望む麻子さんに対する医師の励ましだったのかもしれませんが、麻子さんとっては生きる指針になったのです。

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