日経メディカルのロゴ画像

『タミフル耐性菌』
木村知(有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役、医学博士)

2009/08/27

 「タミフル耐性菌が発生したんですってね」 先日、風邪で来院した園児の母親にそう言われた。「耐性『菌』でなくて耐性『ウイルス』でしょう?」と私は口をはさんでみたのだが、それを無視して母親は、「この冬はどうなってしまうんでしょうか?新聞には、その患者さんは、リレンザを使ったら回復できた、と書いてあったからひとまず安心しましたけど。でも、リレンザの耐性菌もいずれ出てくるんでしょう?」と少々興奮気味。

 「もともと元気なひとなら特別な薬なんか使わなくたって、自然に治るんだから、あんまり心配しなくていいんですよ」とその場はそれで終わらせたが、実際冬場になったら、このようなやりとりが一日に何度も交わされることになるのであろう。

 高度な情報社会で、インターネットも多くのひとが当たり前に使いこなせる現在では、患者さんの医療に関する知識が以前に比べて格段に増えた。しかし、残念ながらそのすべてが正確な知識というわけではない。今まで医者しか使わなかった専門用語が当たり前のように世間一般に浸透し、診察室で、あまり専門用語に気を遣わなくてもよくなってきたのは、ある意味助かるのだが、この母親の「耐性菌」のように中途半端な知識に基づいた専門用語を耳にするたびに、何とも言えない気持ちになる。

 中途半端なのは世間一般の医学知識だけではない。この母親が読んだ「タミフル耐性ウイルス」の記事は私も読んで知っていたのだが、その新聞記事には、読者に誤解をもたらす可能性がある、ひとつの中途半端な表現があった。

この記事を読んでいる人におすすめ