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医師の目から見たマニフェスト
多田智裕(武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科)

2009/08/24

 ※この記事は世界を知り、日本を知るグローバルメディア日本ビジネスプレス(JBpress)からの転載です。

 いよいよ総選挙が迫ってきました。7月27日には民主党が「民主党の政権政策 Manifesto2009」を公表し、7月31日には自民党が政権公約「政策BANK」を公表しました。

 このコラムは、あくまでも私の個人的な意見ですし、私が現場の医師である以上、どうしても現場寄りの主張になっていることをご容赦ください。それでも、私なりに医療を良くしたいと思う気持ちを、現場から素直に綴ってきたつもりです。

 さて、そうやって私が綴ってきたことが、どれだけ両党のマニフェストに取り上げてもらえているのか。今回はそれを考えてみたいと思います。

両党とも医療費は増額

 まず、医療費の増額についてです。私は「高齢化が進む以上、医療費が増えるのは必然」だと考えています。だから国家の予算配分も、少子高齢化社会に応じて調整すべきだと思います。その医療費増額について、両党はどう考えているのでしょうか。

 自民党のマニフェストでは、「これまでにない思い切った補正予算を通じ、地域医療の再生や災害に強い病院づくりを進める。(中略)診療報酬は、救急や産科をはじめとする地域医療を確保するため、来年度プラス改定を行う」となっています。

 一方、民主党のマニフェストでは、「社会保障費削減方針(年2200億円、5年間で1兆1000億円)は撤廃します。(中略)総医療費対GDP比をOECD加盟国平均まで今後引き上げていきます。」となっています。この部分だけ見ると、どちらの党も同じように「医療費増額」が必要と考えているようです。

迷走する研修医制度

 次に研修医制度についてです。今後の医療を考える際に、新人医師の研修制度は最重要課題です。今年の改革では、研修内容の質の点検が充分に行なわれないまま、「募集枠制限」という規制的手法が取り入れられてしまいました。

 つまり、医師の地域偏在を解消するために、「研修医の定員について、都道府県ごとの上限新設に加え、すべての研修先病院の募集枠を制限する」ことが定められたのです(参考記事「これでいいのか、研修医制度の改革」)。この改革を巡って、「国家の統制がどこまで許されるかということ。憲法のことを言えば、職業や住居選択の自由もある」という舛添大臣の発言まで飛び出しました。

 研修医制度について自民党は、「医師偏在の解消へ向けた臨床研修医制度とする」とあっさり一言だけ。これでは、新人医師教育について真剣に見直そうと考えているとは思えません。

 一方、民主党の「医療政策」<詳細版>には「これまでの卒後臨床研修の成果を客観的に評価し、前期臨床研修の全国均てん化を図ることによって、後期卒後臨床研修については、総合臨床医研修、へき地医療研修、産科・救急・小児・外科医療研修などの分野を中心にインセンティブを付与することによって、偏在を解消します」とあります(注:「均てん化」とは全国どこでも標準的な専門医療を受けられるようにすること)。主眼である研修内容の充実を最重要視する姿勢を示すとともに、定員調整による強制的な配置手法を否定しています。

解決が急がれる勤務医の労働時間問題

 そして、現在の医療崩壊の最大の原因の1つである、「宿直問題」や「ボランティアオンコール」などに代表される、過労死基準を超える勤務医の労働時間問題についてはどうでしょうか。

 これは私が一番改善を願っている問題なのですが、自民党の政権公約内には、私の探し方が悪いのか文面を見つけることができません…。もっともこれは、現在の労働基準法の範囲内で対処可能なので、わざわざ記載しなかっただけかもしれません。

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