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ボストン便り 4回目
患者会のアドヴォカシー活動
細田満和子(ハーバード公衆衛生大学院国際保健学部リサーチ・フェロー)

2009/08/27

●患者会の力

 アメリカの医療を眺めてみると日本とは異なる点がいくつもありますが、その中でも患者や患者会の立場はかなり異なっているのではないかと思います。アメリカでは1950年代から患者団体や医療利用者団体の活動が活発に行われていて、アドヴォカシー活動(当事者の正当な権利を獲得するための諸活動)を積極的に行い、医療のあり方や政策にまで影響を与えています。

 例えば1958年に設立されたアメリカ退職者協会(AARP)という高齢者団体は、3500万人の加入者を誇り、2003年には高齢者の公的医療保険であるメディケアが処方薬もカバーするようブッシュ政権に働きかけ医療制度改変を実現させてきました。そんな政策を動かしてきた患者会のひとつに、マサチューセッツ州ブレイン・インジュリー・アソシエーション(BIA-MA:頭部外傷や脳卒中による障害を持つ人々の団体)があります。今回は、BIA-MAのアドヴォカシー活動を中心にご紹介したいと思います。

●マサチューセッツ脳損傷者協会(BIA-MA)

 BIA-MAは、脳損傷者及びその家族のために1982年にNPOとして設立された、全米脳損傷者会(1980年設立)の地方組織です。脳損傷は突然に起こることが多く、また人によって歩行や言語に障害を持つなど様々な複雑な現れ方をするので、本人も家族も急に混乱した状況におかれてしまいます。そこで途方にくれて満たされないニーズを抱えた本人と家族のために、ある患者家族が会の設立を準備しました。

 BIA-MAは次第に会員を増やし、現在はボストン(州東部)、ケープコッド(州南部)、スプリングフィールド(州西部)など全州に渡って30のサポート・グループがあります。2007年の年次レポートによると、年間予算は66万ドル(約6600万円)で、歳入の内訳は85%が契約資金(後に詳述)で、寄付は3%、ファンド・レイジング(バザーなど)は4%でした。また歳出の内訳は会議・教育費が42%、支援・予防プログラムが38%、諸経費が11%でした。

●BIA-MAの活動内容

 BIA-MAの活動には、大きく分けて4つあります。

1)予防プログラムの推進:州の行政当局、学校、司法機関と共に、子どもや大人に脳損傷の予防を教えるプログラムを開発する。例えば、シートベルト、チャイルド・シート、ヘルメットの着用についてのキャンペーン、飲酒運転削減の主導など。

2)アドヴォカシー活動:脳損傷サバイバーとその家族のためのサービスを確立するために州の司法当局や行政当局と連携し、実際にサービス向上や脳損傷予防のための新しい立法をしてきた。

3)教育:年間を通じて、会議やワークショップを主催。それらは、年次会議、スポーツ障害会議、医療者のワークショップ、家族とサバイバーのワークショップなど。

4)サバイバーと家族の支援:社会的資源のリスト、州のサービス情報、医療機関、住居、法的サービス、そのほかの情報を、サバイバーや家族に提供し、かつ各種相談に応じる。さらに、電話か電子メールによる「ブレイン・インジュリー・ヘルプ・ライン」を設け、ソーシャルワーカーが各種の情報提供やカウンセリングする体制を整備。また、全州に渡って30の家族とサバイバーのためのサポート・グループがあり、出会いの場を提供。

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