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新型インフルエンザと輸血の問題をもっと議論しよう―日赤プレスリリースに思うこと―
成松宏人(東大医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門客員研究員)

2009/08/22

なりまつ ひろと氏○1999年名大医学部医学科卒業。2008年名大大学院医学系研究科分子細胞内科学(血液・腫瘍内科学)修了。2008年4月より現職。

【新型インフルエンザと輸血供給問題?血小板輸血が危ない!】

 今春の新型インフルエンザ騒動は、医療関係者に危機管理について課題を突きつけました。2009年5月、関西地区で献血者数が34%も減少したのです(朝日新聞 2009/5/23)。これは新型インフルエンザの感染拡大により外出を控える人が増え、献血が減ったことが原因でした。特に血小板輸血への影響は深刻です。常温保存のため、4日間しか保存できず、在庫調整が困難だからです。血小板が不足すれば、がん治療や大手術は制限されます。

【病原体不活化技術】

 輸血の病原体不活化は、血液を処理し核酸を壊すことによって、ウイルス・細菌・原虫などの病原体を殺す技術です。多くの専門家は、この技術は、新型インフルエンザ流行時の輸血確保に有用かもしれないと考えています。

 少し、専門的になりますが、ソラレン誘導体を用いた不活化技術をご紹介しましょう。ソラレンはレモン、セロリなどの食品に多く含まれる化合物です。この技術を用いれば、血小板製剤の保存期限は4日から7日に延びます。なぜならば、この方法は保存中の細菌増殖を抑制可能だからです。食べ物にたとえると「真空パック」とか「防腐剤」といったイメージでしょうか。もし、保存期間が延びれば、輸血の充足している地域から、不足している地域に血液をまわすことが容易になります。

 この技術は、世界で急速に普及しつつあります。具体的にはEU16カ国、一部の東南アジア諸国では既に承認されています。また、米国、中国、韓国では承認のための審査中です。

【日赤からのプレスリリース】

 我が国でも、この問題について議論が進みつつあります。ちなみに、筆者もMRICに寄稿させていただきました

 7月28日、日本赤十字社(日赤)から「血液製剤における安全対策の進捗状況」と題したプレスリリースが発表されました。日赤は、日本の輸血事業を独占している組織で、輸血医療に対する影響力は絶大です。私は、日赤が自らの意見を社会に示したことは評価しますが、このプレスリリースでは、国民に十分な情報を提供しておらず、不十分だと感じます。まず、プレスリリースを引用しましょう。

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