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ボストン便り 2回目
全米初・マサチューセッツの州民皆保険 ヘルスケア改革法の舞台裏
細田満和子(ハーバード公衆衛生大学院国際保健学部リサーチ・フェロー)

2009/06/22

 前回は、全米で初の州民皆保険を定めたマサチューセッツ・ヘルスケア改革法の成立とその背景についてご紹介しました。今回はそれがどのように運用されていて、どのような評価を受けているのか、またこの改革法を推進した立役者についてご紹介したいと思います。

●無保険者へのペナルティ

 2007年にスタートしたヘルスケア改革法によって、マサチューセッツ州では44万2千人が新たに健康保険に加入することになりました。これで、2005年の時点で55万人いるといわれた州内の無保険者は、約10万人へと劇的に減少し、全人口の3パーセントだけになりました。ちなみにこの3パーセントの保険を持たない層というのは、特に健康問題を持たない若年労働者たちだと言われています。

 このように短期間に無保険者が激減したのは驚きですが、その理由は低所得者向けに保険料の補助があることに加えて、保険料を払っていないと罰金が課される制度が設けられたからです。州税の申告をする際の用紙に、保険への加入を記す箇所があるので、州は誰が保険に入っていて誰が入っていないかを把握できるのです。

 罰金の金額は所得に応じていますが、初年度の2007年は最大で219ドル(2万円)でした。そして翌年の2008年に最大912ドル(9万円)に急上昇しました。912ドルというのは、一番安い保険プランのちょうど半額です。

 今後も順次、罰金の金額を上げてゆくとのことで、保険に入った方が罰金を払うよりどんどん有利になってきます。このことから、今後数年で無保険者は限りなくゼロに近くなることが見込まれています。

●州民のヘルスケア改革法の受け止め方

 では、このヘルスケア改革法は州民たちにどのように受け止められているのでしょうか。一般にアメリカ人は、自由に価値を求め、個人主義で自己責任を尊ぶ国民だといわれています。それゆえ、健康保険を持つことを義務としたり、保険料を払えない人に州が税金を配分して補助したりする公的保険システムは、「社会主義的 Socialistic」とさえ言われ、嫌われたりすることがあります。ところがマサチューセッツでは、実際のところ、かなり好意的に受け入れられているようです。

 それは、2008年7月にハーバード公衆衛生大学院とブルークロス・ブルーシールド・マサチューセッツ財団によって実施された州民への調査から分かります。この調査では、ランダム・サンプリングされた18歳以上の州民1,015人を対象に、州民皆保険を定めたヘルスケア改革法の認知度や、改革法の賛否が質問されています。

 まず認知度ですが、「とてもよく知っている」から「少しだけ知っている」までを合わせると94%に上っていました。6%は「まったく知らない」と答えていたわけですが、改革法が成立したすぐ後の2006年9月の調査では、「まったく知らない」人が20%もいたことを鑑みれば、急速に認知度が上がっているといえるでしょう。

 そして改革法を知っていると答えた人のうち、改革法に賛成の人は69%に上り、改革法反対の22%を大きく上回っていました。また、連邦貧困レベル300%(4人家族で年収約600万円以下)の人々には州が保険料を補助することに賛成の人は77%で、やはり反対の18%を上回っていました。そして、改革法が州内の無保険者を減らすことに成功していると答えた人は71%でした。これらのことから多くの州民が改革法を支持しており、その成果を肯定的に評価していることが分かります。

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