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科学は政治を動かせるか
参議院新型インフルエンザ集中審議傍聴記
中田はる佳(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門)

2009/06/17

なかだ はるか氏○2004年東大学医学部健康科学・看護学科卒業。07年早稲田大大学院法務研究科修了(法務博士(専門職))。

【はじめに】

 誰一人として正解を知っている人はいない。現場や専門家の声に謙虚に耳を傾けてすべての関係者が立場を越えて国民の命を守らなければならない。5月28日、参議院予算委員会において新型インフルエンザの問題が集中審議された。私は大学で保健学を学び、大学院で法律を学んだ。今回の新型インフルエンザ問題は、公衆衛生と法律にまたがる問題であると考え、傍聴に臨んだ。本稿ではその感想等を述べたいと思う。

【背景】

 当初の予定では、5月25日の参議院予算委員会で鈴木寛議員(民主党)が新型インフルエンザについて質問をするはずであった。鈴木議員は、参考人として、現役検疫官の木村盛世氏と国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官の森兼啓太氏を招致していた。

 しかし、当日開始時間になっても予算委員会は始まらず、開始予定時刻を1時間もオーバーした。これは、与党が木村氏の出席を拒んだためである。鈴木議員によれば、舛添大臣は木村氏の出席を容認したというが、それにもかかわらず木村氏の出席は拒まれたのである。

 結局、25日は参考人招致が認められず、28日の午前中に審議されることとなった。このことはメディアでも報道され、政府に不利な発言をすると考えられる参考人を隠ぺいしたのではないかと批判された(朝日新聞「与党、水際対策批判した検疫官の出席拒否 野党は反発」、ロハスメディカル「新型インフル 参院予算委で“参考人隠し”」など)。

【5月28日集中審議の流れ 1.鈴木議員の質問】

 この日は、新型インフルエンザ問題について、鈴木寛議員(民主党)、西島英利議員(自由民主党)、澤雄二議員(公明党)から質問が行われた。参考人は、鈴木議員が招聘した現役検疫官・木村盛世氏、国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官・森兼啓太氏、西島議員が招聘した新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長・尾身茂氏、国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏である。

 両党が招聘した参考人の顔ぶれを見ると、政府専門家委員会vs.現場、感染研の上司vs.部下という対立構造になっていた。そんな中、政府のこれまでの新型インフルエンザ対策にどのような批判が出るのか出ないのか、注目の審議であった。場内にはNHKの生中継が入り、各種メディアの取材も入っていた。

【検疫偏重体制についての質問】

 最初に新型インフルエンザ関連の質問を行ったのは鈴木議員であった。鈴木議員は冒頭で日夜インフルエンザ対策に従事している人々への感謝の言葉を述べ、質問に入った。

 まず、鈴木議員が問題としたのは検疫偏重体制である。この問題については、非常に難しい判断であり、インフルエンザが国内で発生したという結果について追及するつもりはないが、国内外の専門家や現場が検疫体制を支持していたのかという指摘がなされた。

 森兼氏は、検疫体制について四点のコメントを述べた。

1)検疫は有症状者の発見には一定の効果があるが、コストとのバランスが重要である
2)成田での感染者発見に目が向いて、国内整備が遅れたこと
3)国内感染が確認された時点で検疫を縮小すべきであったこと
4)検疫に2~3時間もの時間を要し、延べ10万人もの人々に不快感を与えたこと

である。森兼氏は、特に2)の点については第二波への教訓とすべきであると明言した。

 そして、現場や厚労省内部からも検疫体制に疑問の声が出ていたにも関わらず、検疫が強行された背景にはどのようなことがあったのかという質問に対し、木村氏は三つの問題点を挙げ、検疫偏重体制を批判した。

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