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新型インフルエンザパンデミックの脅威と輸血の安全性
下平滋隆(信州大学先端細胞治療センター)

2009/05/18

しもだいら しげたか氏○1990年信州大医学部卒業。信州大学医学部附属病院准教授、先端細胞治療センター副センター長を経て2009年分子細胞診療室長に就任。輸血・細胞治療、再生療法の開発研究に従事。

 国民や医療者は、新型インフルエンザ(インフルエンザA型H1N1)の警戒水準が短期間に「フェーズ5」に引き上げられ、温暖化とグローバル化による新興感染症の脅威が急速に拡大することを強く認識したのではないでしょうか。医療現場はただでさえ人手不足で、限界の状態にあるのに、ゴールデンウィーク期間においても、その行動計画に則った水際阻止と封じ込めの対策に追われています。

 こと血液事業において、パンデミックの脅威と輸血の安全性について考えてみましょう。頻度としては少数であっても輸血を受ける患者にとって重篤な合併症となるHIV、HBV、HCV、梅毒、ヒト白血病ウイルス(HTLV1)などの感染症は、リスクゼロにはならなくても、日赤血液センターの検査精度を高めることで除外するシステムが構築されています。

 しかし、新型インフルエンザをはじめとする新興感染症のパンデミックの脅威に対しては、献血ドナーである健常な国民の多くがリスクに曝されても、献血ドナーの問診以外に病原のスクリーニング検査系がないのが実際です。海外渡航4週以内の方、インフルエンザ症状のある方、感冒や腸炎の症状のある方の献血をご遠慮頂くような日本赤十字社からの公示がやっとです。

 感染が拡大した地域の献血ドナー数が減少するだけではなく、医療者や血液センター職員にとってもインフルエンザ罹患によるリスクの影響が危惧されます。リスクのある献血集団を承知の上で血液事業を継続するか、その地域の拠点センターの業務を停止するか、難しい判断を迫られることになります。

 輸血を必要とする患者にとって、輸血によるインフルエンザA型H1N1感染のリスクは明らかではありませんが、事例が起こった結果として遡及調査による因果関係の証明は世界的に必要となっています。現在、日赤血液センターでは国内10拠点に集約化が進行しており、もし感染拡大している地域のセンターがあれば、その分もカバーして供給を強いられる他の拠点センターには大きな負荷が掛かることが想像されます。

 即ち新型インフルエンザのパンデミックの影響は、血液製剤の安定供給にとって大きな脅威となり、集約化や合理化でサービスが低下している地域では、供給遅延の問題が益々危惧されることになります。

 特に使用期限が4日間と短い血小板は、骨髄移植をはじめとして継続的に必要とする血液疾患治療や大量輸血を必要とする心血管系大手術や危機的出血の対応を要する高度救命救急においては、深刻な事態になると考えます。バクスター社製の骨髄採取キットの供給が突然停止した時のような国内の混乱は避けなければなりません。

 昨年、2008年1月、フィブリノゲン製剤等による薬害C型肝炎救済制度が施行され、参議院予算委員会における田中康夫参議院議員の質問に対する舛添厚生労働相、当時の福田総理の回答から、安全対策の推進および督促が出されて不活化導入に向けて急展開をみせていました。

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