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北海道医学生の会が反対署名活動を行う3つの理由
私たちも計画配置に反対します!
津田健司(北海道医学生の会、北海道大学医学部6年)

2009/04/13

つだ けんじ氏○現在北大医学部医学科6年生。寒い北海道でサーフィンをしながら、医療について考える日々。

【地域住民と医師・医学生は共に歩む存在】

 北海道医学生の会は、北海道大学の医学教育をより良いものにするために、アンケートや、学生同士、先生方との対話を通じて具体的な活動を積み重ねてきました。(2009.3.22「医学生の考える医学教育カリキュラムの提案」

 その中で、「教育とは何か」という本質的な課題に幾度となくぶつかりました。医師は生涯を通じて自己研鑽を積み、その成果を地域住民に還元します。私たち医学生も各自が理想とする医師像を心に描き、早く一人前の医師になって、それぞれの地域で貢献したいと考えています。本来、地域住民と医師・医学生は、高い質の医療を目指して共に歩む存在であり、医学教育と地域医療は両立するはずです。

 北海道医学生の会は、先日発表された臨床研修制度の改定案の中の「都道府県別の募集定員の上限を設置すること」(いわゆる研修医計画配置)について、

(1)憲法上等しく保障されている居住、移転及び職業選択の自由を侵害するものであること
(2)教育的視点が欠落しているため、医療の質を低下させること
(3)地域医療の再生はおろか徹底的に破壊する危険性をはらむこと

を指摘し、性急な改定に対して反対署名を開始しました。(北海道医学生の会ホームページ)私達の提案がベストとは考えていません。しかし、少なくとも厚労省の改定案については更に議論を積み重ねるべきと考え、まず声を上げることにいたしました。反対の理由を以下に述べたいと思います。

【改定案の内容】

 去る2月19日に厚労省「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」は、「臨床研修制度等に関する意見のとりまとめ」を発表し、従来の臨床研修制度に変更が2点加えられることになりました。第一が研修プログラムの弾力化、第二が都道府県別の募集定員の上限設置です。

【研修プログラムの弾力化には一定の評価】

 まず、研修プログラムの弾力化とは具体的にはどのようなことでしょうか。

 2004年度から始まった臨床研修制度では、2年間で内科、外科、救急・麻酔科、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療の7診療科にて1カ月以上研修することが義務づけられてきました。

 これに対し今回の改定では、必修の診療科が内科(6か月以上)、救急(3か月以上)、地域医療(1か月以上)に削減され、必修でなくなる4診療科に関しては「選択必修」として2診療科の選択を義務づけられました。なお、研修医の希望により改定前のように幅広い診療科を回ることも可能です。

 このように必修科目が削減されたため、2年目から各自が希望する専門科目を研修することも可能になりました。プログラムを弾力化すれば、地域や時代によって変化する研修医や国民のニーズに柔軟に対応しやすくなるため、好ましい改革と考えています。

【単一の価値観の押しつけである「臨床研修制度」では多様性が担保されない】

 しかしながら私たちは、「臨床研修制度」そのものを問題視しています。それは「卒後2年間はプライマリケア能力の習得を最重要視すべきか」という価値観の内容の是非ではなく、単一の価値観を唯一絶対だと信じ、全国一律に突き進むことの脆弱性です。

 「臨床研修制度」は、達成目標からもわかるように、「卒後二年間はプライマリケア能力の習得を最重要視すべき」という単一の価値観をすべての研修医に押し付けています。医学部を卒業した新人に、さらなる教育=「研修」を行って、能力のボトムアップを図ることは必要です。しかし研修がボトムアップではなく、単一の価値観を押し付ける規格化であってはなりません。なぜなら、規格化は多様性を削ぎ、地域や時代のニーズへの対応を困難にするからです。

 実際、「臨床研修制度」が生み出したひずみはすでに表面化しており、外科系学会(日本外科学会、日本産科婦人科学会、日本皮膚科学会、日本整形外科学会、日本眼科学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本泌尿器科学会、日本脳神経外科学会)の入会者数は3715人から2781人へと大幅に減少し、外科手術の危機的状況に拍車をかけました。「外科崩壊」は既にマスメディアが広く報道している通りです。

 このような事実は、プライマリケアと高度医療のバランスが崩れつつあることを示しています。言うまでもありませんが、わが国の医療には両方が必要です。

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