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医師に関する都市伝説(3)卒後臨床研修制度の必修化によって地域医療は崩壊した?
中村利仁(北海道大学大学院医学研究科医療システム学分野助教)

2009/04/05

なかむら としひと氏○1991年北大医学部卒業。北大大学院医学研究科助手、東大医科学研究所客員研究員を経て2008年東北大大学院修了。09年1月より現職。

 医師と医療を巡る都市伝説のいくつかを、公開されている統計データによって検証して行こうという連載の最終回です。お付き合い下さい。

 第1回では、年齢別の病院勤務医師の割合がこの10年間まったくと言って良いほどに変わらず(第1回・図2)、近年の若手医師の開業医志向というウワサには根も葉もないことを明らかにしました。前回の第2回では、都市部の人口当たり若年層医師数はむしろ減少してきており(第2回・図9)、若手医師の都市部志向というウワサにもやはり根拠のないことを明らかにしました。

 今回は「卒後臨床研修制度の必修化によって地域医療崩壊した」、つまり(ちょっと長いのですが)スーパーローテート式の臨床研修制度導入の影響で、大学病院からの研修医離れによる人手不足の補完と、それでも居残った研修医達の教育とのために中堅層の医師が地域医療を離れ、大学病院に集中したという伝説を検討します。使用するデータは、主としてやはり医師調査です。


(図10)

 図10は、大学病院ではない、いわゆる市中病院の医師数の5歳階級別医師数の年次推移です。

 特徴的なことは、医師数として35~39歳層、40~44歳層、30~34歳層が多く、主として研修医が属する25~29歳層よりも多いということです。25~29歳層の占める割合は、平成8年で14.3%であり、その後、実数は15,353人から16,104人へと全国で751人増えているにも拘わらず、平成18年末ではさらに低下して13%に過ぎません。

 また、30~34歳層、35~39歳層は臨床研修制度が変わる遙か前の平成10年頃から既に減少傾向となっています。40~44歳層は平成16年までは増加傾向にありましたがその後は減少に転じています。

 平成8年から平成18年までの10年間で、30~34歳層は19,567人から17,644人へと1,921人の減少、35~39歳層は20,548人から19,022へと1,526人の減少が見られます。40~44歳層は16,226人から18,050人へとまだ1,824人の増加が見られていますが、既に天井を打った状況にあります。もう増えないのです。

 ただしこの変化は、医学部入学定員の削減によるものであって、臨床研修制度によるものではありません。

 また、医学部の入学定員の急増した頃の影響が、45~49歳層、50~54歳層、55~59歳層の増加という形で見て取れます。これら年齢層の増加の影響が強く出て、市中病院全体の医師数は107,036人から123,639人へと16,603人(16%)の増加が見られています。

 市中病院の年齢階級別医師数と年齢構成には、臨床研修制度の影響は観察されません。

(図11)

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