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医師に関する都市伝説(1)若い医者はすぐに開業する
中村利仁(北海道大学大学院医学研究科医療システム学分野助教)

2009/04/03

なかむら としひと氏○1991年北大医学部卒業。北大大学院医学研究科助手、東大医科学研究所客員研究員を経て2008年東北大大学院修了。09年1月より現職。

 今回から3回の予定で、医師と医療を巡る都市伝説のいくつかを、公開されている統計データによって検証して行きます。どうかお付き合い下さい。

 初回は近年言われることの多い、「近頃の若い医者はすぐに病院を辞めて開業してしまう」、つまり病院勤務医が無床のビル診療所などで開業するペースが早まっているというウワサを検討します。

 ここでは年齢別に医師の働いている場所がどのように推移してきているのかを見てみます。検討に当たっては、隔年(2年に一度)12月31日付で医師法の名の下に行われている医師調査の、平成8年から平成18年までのデータを使用します。

(図1)

 図1では、平成18年末(最新)の性年齢別の業務種別割合をグラフ化しています。

 母数は医師総数で、そのうち、大学病院を含む病院や診療所の勤務医・開設者や介護老人保健施設などなどに性年齢別にどのように分布しているのかを見ています。

 性年齢別に見ると、ほぼ100%が医師人生を病院勤務から歩み出し、年々1%ずつ程度が診療所その他に移動します。65歳頃までに約60%が病院勤務を離れて、およそ40%が病院に残っているということが見て取れます。

 もちろん、これは断面調査ですので、現在の25歳の医師が65歳になった時にどこで働いているのかを意味するものではなく、また、現在60歳の医師がかつて30歳であったときにどこで働いていたのかを示すものでもありません。

 次に、図2では、平成8年から平成18年にかけて、医師総数の中で病院の従事者の年齢別割合がどのように変わってきたのかを示しています。

(図2)

 当初は比較的緩やかな傾きが、35歳頃からカーブを描いて傾きが急峻となり、55歳頃に再び緩やかな逆S字状となっているのがお判り頂けるだろうと思います。

 少なくとも、50歳未満で大きな変化は見られません。これをみるだけで、「近頃の若い医者はすぐに病院を辞めて開業してしまう」という言辞に根拠のないことが分かっていただけるだろうと思います。

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