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一開業医から勤務医の先生方へ
於曽能正博(おその整形外科院長、東京保険医協会広報理事)

2009/03/13

おその まさひろ氏○1978年横浜市大医学部卒業。93年におその整形外科を開業。2006年に東京保険医協会・広報理事に就任、現在に至る。

 大古の昔から洋の東西を問わず、国や組織などを壊そうとする時、最も簡単で効果のある方法は内部抗争を誘発する事でした。上手く火種をつけることができれば、あとは外から何も手を加えなくとも勝手に崩壊していきます。

 開業医に不満を持つ勤務医は、少なからずいらっしゃるようです。確かに、あまりにもひどい勤務医の状況に比べれば、開業医は若干はましかもしれません。しかし、開業医を批判すれば、勤務医の状況はよくなるのでしょうか。

 例えば、昨年4月診療所から病院に医療費が回されましたが、勤務医の状況は改善されたのでしょうか。ほとんど変わっていないと思います。一方、この改定によって開業医の所得は大きく減少しました。

 これがこの国のやり方です。批判を利用して一方にわずかに手当てをし、他方は大きく下げる。

 過去何回かの改定によって病院・診療所ともに厳しい状況に置かれています。今後、同じように診療所から病院へ医療費を回すような論議がおきたら、開業医と勤務医との対立が始まるでしょう。

 診療科毎に、また臨床経験や手術の巧拙によって診療報酬を設定しようという動きがあります。これも結局厚労省に利用され、大部分の科で点数が下げられるだけの結果に終わることは明白です。ただでさえ複雑な現在の点数を、さらに複雑にする必要はありません。

 少し話は変わりますが、私は労働基準法に従った勤務時間が守られ、当直時や待機時などを含め正当な超過勤務手当が支払われるだけで、開業医に対する勤務医の先生方の不満のかなりの部分が解消されるのではないかと考えています。

 真夜中に受診する患者さんの中には、「割増料金を払っているのだから昼間より丁寧な診察・検査・治療を受けて当然」とおっしゃる方もおられます。ここまでいかなくても、一般の方は当直明けの医師が次の日も働いているとは想像もしていませんし、説明しても信じません。

 そもそも当直というのは労働基準法41条に示されているように入院患者さんの状態の監視等が仕事です。外来の患者さんをを診ることは深夜勤務であり、当直ではありません。

 また、せっかくの休日なのに自宅待機で酒も飲めず外出もできずに拘束され、結果として何もなかったから手当てなしというのも異常です。この意味ではどこかの国の首相が言うように「医師は非常識」なのかもしれません。

 開業医・勤務医を問わず、所得はマスコミや金融業などに比べ低いのです。以前、あるテレビ番組で和田アキ子さんが「えっ。お医者さんの給料って、そんなに安いの?」と発言していた事を私は覚えています。

 開業医は、病気になり休業すれば直ちに収入の道は閉ざされ、かつ職員の給料・家賃・銀行からの借入金などは支払わねばなりません。また、退職金もありません。

 収入と所得は全く異なりますが、マスコミは意図的に混同して報道します。収入から経費を引いた所得は、今や勤務医と変わらないか、低くなりつつあります。

 開業医は経営者であり、医学以外の様々な雑用に時間を取られます。よく標榜診療時間だけしか働いていないと誤解されます。休日夜間の診療当番や学校医の仕事もあります。

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