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千葉県がんセンター長の経験からみえてきたこと
公立病院はなぜ赤字か?
竜崇正(千葉県がんセンターセンター長)

2009/01/27

りゅう むねまさ氏○1968年千葉大医学部卒業。国立がんセンター東病院外科部長、千葉県立佐原病院院長を経て2005年より現職。著書に『肝臓の外科解剖』(医学書院)など。

1 公立病院の現状

 公立病院は全国で970あるが、2001年に赤字の公立病院は50%で累積欠損金は1兆4000億円であったが、診療報酬の切り下げやその他で2006年には75%の公立病院が赤字に苦しみ経常赤字額は1997億円で、累積欠損金は1兆9736億円となっている。

 このため総務省では2007年末公立病院改革ガイドラインを示し、各自治体に公立病院の改革プランの提出を命じた。

 ガイドラインでは、

1,病床利用率や人件費比率など具体的数値目標を定めての「経営の効率化」、
2,近隣の病院との機能重複を避ける「再編ネットワーク化、
3,経営の権限と責任の一本化や民間的手法を取り入れるため、指定管理者制度の導入

など、「経営形態の見直し」を改革の柱にすえた。この中身は廃院にする際の手続きまで示しており、公立病院にとっては相次ぐ医療費の切り下げの中、厳しい時代にたたされている。

2 赤字の原因は?ある評論家の意見

 『Wedge』2008年7月号で一橋大学の井伊雅子教授は赤字の原因を、医師不足、診療報酬改定による医業収入の減少に加え、人件費や医業材料、病院建設費など「公」ならではの高コスト体質によるとしている。そしてこの大赤字の原因は、経営感覚を欠いた病院に責任があり、これを看過してきた行政や議会にも責任がある論評している。

 公立病院改革ガイドライン策定のある委員は、民では黒字で維持しているのだから、公立病院はさらなる経営努力をして、公的な繰り入れ金が不必要なレベルまでの収支均衡を目指すべきであると述べている。

3 病院赤字の本当の原因は?

1) 国の低医療費政策が主な原因!

 公立病院が日本の救急医療や良質な医療を支えているといっても過言ではない。その病院の医師も懸命に働いている。それでも赤字になるその医療費の設定や医療政策に問題があるのである。

 赤字は公立病院だけではない。民間病院も加入している日本病院会のデーターでは、診療報酬が3.16%マイナス改定となった年の平成18年6月の1145病院のデーターでは医業収益が下がり、病床数100あたり総費用は1億2102万に対し総収益は1億3927万、平成19年6月の1167病院では総費用1億5135万に対し総収益1億4043万しかなく、全体として低医療費政策のために全体が赤字体質となっていることが明らかであり、70%以上の病院が赤字に苦しんでいるのである。

2)地方公営企業法の適応を受けるため、病院運営に必要な人材やシステム導入など、状況に応じた弾力的な経営ができない。

 病院運営に素人の事業管理者が、公務員ルールを適用して病院運営をするので効率的運営ができないのが、公立病院赤字の大きな原因である。数字あわせによる経営計画を策定しての病院運営が行われるため、より良い医療を提供しようとする現場医師と意見が合わなくなり、医師が公立病院を離れる要因となり、さらに赤字に拍車がかっている。千葉県病院局長はこの3年の間に3人替わっており、継続的な病院運営方針がとれない中で、赤字になっても誰も責任をとらずに事業管理者が「渡り」を繰り返すので、残された医療現場はさらに疲弊する結果となっている。

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