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骨髄移植ができなくなる?患者のために私たちが出来ること
大谷貴子(特定非営利活動法人全国骨髄バンク推進連絡協議会会長)

2009/01/24

おおたに たかこ氏○財団法人骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク)評議員などを経て2005年より現職。自らの骨髄移植の経験をもとに、白血病患者への支援の和を広げるため、全国各地での講演に精力的に取り組んでいる。

 昨年の12月20日、お子さんの骨髄移植が2月に迫ったお父様から相談を受けました。同日の読売新聞に、骨髄採取に必要なキットが不足する可能性があると報道されているが、子供が移植を受けられなくなるのではないかと。

 急いで新聞を確認したところ、そこに載っていたのは「国内の骨髄移植の9割以上で利用されている米バクスター社製の医療器具(このキットはドナーから採取した骨髄液を濾過し、その中の不必要な成分を取り除く器具であり、骨髄を移植された患者に血栓ができるのを防止するのに欠かせないもの)が在庫不足となり、来年2月以降の移植が一時的に難しくなる可能性が出ている。」という記事でした。

 その時は「あまり慌てないで、少し待ってください」と伝えたものの、その後、ある先生から連絡をいただき、悠長に構えていられる状況ではないことを知りました。

 12月29日の日本造血細胞移植学会の発表では、国内にあるキットの在庫が500個弱で、1月以降、血縁・非血縁を合わせた骨髄移植が一月に150~160件のペースで行われることから、数量的には4月以降採取に支障が出ることになるが、実際問題として、採取する施設間でのキットの融通が困難であることから、施設によっては3月から採取に支障をきたす可能性があるとのことでした。

 別の情報によると、このキットは日本国内ばかりでなく海外でも多く骨髄採取に使用されていることから、世界中で情報が錯綜し、医療関係者の間で混乱しているようです。

 1月6日には、日本造血細胞移植学会が、「移植骨髄調整器具米国バイオアクセス社ボーンマロウコレクションシステム緊急輸入・使用許可に関する要望書」を厚労大臣と保険局医療課長宛に提出すると発表しました。

 また、同日の読売新聞には、「日本造血細胞移植学会は5日、米国の他メーカー製の同種器具が安全性に問題なく、必要数を確保できることを確認した。代替品は日本では未承認だが、厚生労働省が緊急措置として輸入や保険適用を認める方向で、移植の中断は避けられる見通しとなった。」との記事が載りました。

 しかし、これも厚労省からの正式な発表ではなく患者が安心できるものではありません。さらに、もし代替品に保険が適用されず、医師が個人輸入した未承認キットによる非保険診療となれば、混合診療が認められていない現状では、骨髄移植にかかる費用すべてが患者の個人負担となり、その額は600~900万円程度になると推定されます。

 これでは移植をあきらめざるを得ない患者が出てくることは必至です。代替品を認める場合は、保険適用がセットになっていなければ患者にとっては代替品を使えないのと同じことになります。

 今回の「ボーンマロウコレクションキット」の供給危機の問題は、患者にとってはまさに、生命に直結する重大な問題です。しかし、マスコミ報道が唯一の情報源であり、国からの正確な情報提供もない中では、不安が大きくなるばかりです。

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