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パリの開業訪問看護師
児玉有子(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門)

2009/01/20

こだま ゆうこ氏○2000年佐賀医大大学院看護学専攻(修士課程)修了。虎の門病院での勤務を経て、佐賀医科大学(佐賀大学医学部)看護学科で助手(助教)として学生教育に携わったのち、現職。

 先日、パリで開業訪問看護師をしているクリストフ・ラセール氏を訪ね、訪問化学療法看護や実際の訪問に関してインタビューを行いましたので、ここに報告いたします。

 パリの看護師のキャリアパスとして、病院で一定期間勤務した後にHADの訪問看護師や、開業(開業訪問看護師)を選択する人たちが少なくありません。自分の時間が確保しやすいことと経済的インセンティブがその主な動機です。

 開業のスタイルには、まったくの自由開業(自由診療体系)と公的な保険からの支払いを受けることができる保険機関としての開業の2種類があり、クリストフ・ラセール氏は後者の開業スタイルをとっています。

 クリストフ・ラセール氏は免許取得後9年目の看護師で、4年間の病院勤務の後に開業しました。病院では日本のICUやHCUに相当するような、重症で透析や呼吸管理などを必要とする患者を専門に扱うユニットに勤務していました。

 現在、開業して6年目を迎えます。同氏は、自由時間や金銭的な理由の他に、「高度な医療を街でもしたい」という希望を持っていたこと、そして「患者およびその家族と深い関わりを持ち、質の高いケアを提供したい」という思いから、開業看護師の道を選びました。

【7時から23時まで、パリ17区内の特定地域を訪問】
 1日に約60人の患者の看護を担当し、月~金曜日の7時から23時が通常の対応時間、23時から翌朝6時までと土日はオンコール体制で患者を看守ります。

 1日の内訳は以下のとおりです。7時に開始して13時までが午前の訪問、13時に一度オフィスに戻り、ランチタイムを利用して患者を看ます。その後14時から17時まで訪問看護、再び17時にオフィスへ戻り、仕事からの帰宅途中に受診する患者のために外来を開けます。そして19時からは夜間の訪問に出かけ、23時に1日の業務が終了します。

 ちなみに私が訪問した前日に彼が看た患者数は、臨時訪問を含め86人、16時間のうちに口にしたのは、バナナと患者からプレゼントされた3個のチョコレート(夜間に訪問した患者宅でバナナしか食べていないことを愚痴ったために頂いたもの)のみだったそうです。

 外来患者が訪れる同氏のオフィスはマンション1階の一室にあり、理学療法士や鍼灸師などの他のコメディカルとの共有となっています。そのなかで彼は畳3畳程度を自分のブースとして確保し、狭いところに種々の医療用品やスケジュール管理等に使うPC、書類トレイなどを置いています。書類トレイには保険機関へ届ける請求関連書類が山積みにされていました。

 開業看護師として7時から23時まで働き、60人以上の訪問し外来患者を看ることで、同氏は病院勤務時代に比べて3倍程度の収入を得ているようです。

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