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「医療崩壊」を防ぐために必要な二つの後方支援
平岡諦(大阪府立成人病センター血液・化学療法科)

2009/01/19

ひらおか あきら氏○1969年阪大医学部卒。同大病院助手などを経て、96年から大阪府立成人病センター第五内科(現 血液・化学療法科)部長。2002年からは外来化学療法室の室長兼任。

「医療崩壊」防ぐ道

 現在の勤務医、それは、ひとり前線に晒されし兵士。
 押し寄せる患者の波、不眠不休の応戦。
 朦朧の頭、かすめるは医療ミスの恐怖、はたまた過労死か。
 時には患者・家族・遺族から、さらには検察からの銃弾も。
 ああ、何のための戦いか。
 気付けば後方支援無く、一人また一人、前線を去っていく。

 あるべき支援はいずこから?
 職場環境は病院管理者から、医療内容は所属学会から。
 早く、早く支援の枠組みを。
 何とか持ちこたえているうちに。

      *      *      *

 医療崩壊を起こしつつある分野で働く勤務医の心情を詩(らしきもの)にした。彼らが持ちこたえるにはそれなりの後方支援が必要である。必要性の詳細については別の二稿(2008.10.17「医療崩壊」と職業倫理2008.12.9「医は仁術」、「応招義務」そして過労死)で述べたが、以下に要点を示す。

後方支援<1> 職場環境は病院管理者から。

 結論から述べると、現在の「医療崩壊」の解決には、次の二点の法律改定が必要である。第1に、いわゆる「応召義務」規定を「医師法」から「医療法」に移し、「応召義務」の責任を勤務医個人から病院管理者(and/or開設者)に負わせること、第2に、「医療法」第3章;医療の安全の確保の項に、「勤務医の過重労働が医療の安全に対するリスクファクターである事(過重労働に対する安全配慮義務)」を追加すること、この二点である。

 次に理由を述べる。

 「医療崩壊」と呼ばれる現在の医療危機は、勤務医が病院を去っていくことで起こる。何故病院を去るのか、過重労働による医療ミス・過労死の危機を感じるからである。過重労働の根源はいわゆる「応召義務」規定である。押し寄せる患者(特に救急患者)に“不眠不休”の状態で、診察を強いられるからである。「医は仁術」の精神で何とか持ちこたえているのが現状である。

 過重労働による医療ミス・過労死の危機感、これを病院管理者は救ってくれない。医療ミスを起こせば個人が責められる。遺族が過労死と訴えても「労働基準法」で認められるかどうかも危うい。何故病院管理者が救ってくれないのか。救う必要が法(特に「医療法」)に定められていないからである。

 「医師法」は医師の資格基準を、「医療法」は病院基準を規定した法律で、ともに昭和23年7月30日に成立した。いわゆる「応招義務」は、医師法第4章 業務;第19条に述べられ、制定当時のまま現在に至っている。内容は「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」である。罰則規定が無いとはいえ、現実には強制力として働く。

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