日経メディカルのロゴ画像

メディアが報道しない東京都立墨東病院事件の背景
国家統制が生み出した東京の医療過疎
上 昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任准教授)

2009/01/05

かみ まさひろ氏○1993年東大医学部卒業。99年東大大学院医学系研究科修了。虎の門病院、国立がんセンター中央病院を経て2005年10月より現職。

※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM(Japan Mail Media)2008年12月3日発行の記事をMRIC用に改訂し転載させていただきました。


 東京都立墨東病院事件を解説するため、過去2回(2008.11.5 JMM「絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート 『第17回 メディアが報道しない東京都立墨東病院事件の背景 第一回』」)(2008.11.9 JMM「絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート『国立病院に生き続ける陸海軍の亡霊』」)の配信では東京都内の大病院のなりたちを説明しました。繰り返しになりますが、その要旨を示します。

1)東京23区内に700床以上の大規模病院は21施設あるが、その半数は大学病院で、残りは都立病院、国立病院(ナショナルセンター)、その他(虎の門病院など)に分類される。

2)大学病院の大半は私立大学であり、大半が明治から大正期に創設された。

3)都立病院は伝染病、貧困、精神病患者の隔離を目的として、明治期に創設されたものが多い。

4)国立施設は旧日本陸海軍の医療施設を前身とし、戦後に厚生省に移管された。

5)大学病院、都立病院、国立病院の大半が、明治から大正期、および戦後早期に創設されているため、当時の東京都市圏、つまり山手線内に集中している。それ以降、医療施設の大規模な移動はなく、近年、新規に大学や大規模病院が創設されていないため、23区東部、23区西部や多摩地区には大規模な医療機関が少ない。

石原慎太郎東京都知事vs.舛添要一厚労大臣論争

 東京都立墨東病院事件の報道を受けて、石原慎太郎東京都知事は国による医師養成が足りなかったことを、舛添要一厚労大臣は東京都が地域医療に配慮しなかったことを責めました。多くのマスメディアで報道されましたから、記憶されている方も多いでしょう。

 実は、この発言は両方とも一部正しく、一部が間違っています。私が点数をつけるとすれば、舛添大臣が70点、石原都知事の発言が30点というところでしょうか。

 しかしながら、この論争は、石原知事、舛添厚労大臣という知名度の高い政治家が、テレビで非難を繰り返したため、結果として、国民が問題の本質から目をそらすことになってしまいました。医療問題に対する貢献を考えれば、石原知事は舛添大臣の足元にも及びません。

 しかしながら、その石原知事が、マスメディアの報道内容では舛添大臣と五十歩百歩のレベルまで戻したのですから、石原知事のテレポリティクスの手腕が優れていたと見るべきなのかもしれません。

この記事を読んでいる人におすすめ