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医療事故調査委員会設置の議論で政治は役割を果たせ
大西健介(民主党愛知13区総支部長)

2008/12/11

おおにし けんすけ氏○1994年京大法学部卒。参議院事務局職員、馬淵澄夫衆議院議員政策秘書を経て、2007年に民主党愛知県連の衆議院候補者公募に合格し、現職に就任。

 私は、以前、馬淵澄夫衆議院議員の政策秘書として、耐震強度偽装事件の国会での真相解明に深く関わりました。耐震偽装を契機として、建築基準法の改正が行われましたが、偽装を生んだ根本的な問題を放置したまま事態を収拾することのみに腐心をし、行政側の責任回避に主眼を置いた確認検査手続の厳格化は、現場に混乱をもたらし、着工件数の落ち込みによる関連産業への連鎖的影響は社会問題となりました。

 私は、この時の苦い経験から、さまざまな分野で官僚主導による現場の声を無視した机上の議論による制度改正が現場を振り回し混乱させている現実に強い危惧を抱いています。

 これは、医療の分野でも見られます。たとえば、診療報酬の外来管理加算を算定する条件を患者が診察室に入ってから出るまでに医師が患者に「おおむね5分を超えて」直接診療に当たっている場合に限定するいわゆる「5分ルール」や後期高齢者終末期相談支援料といった制度は、厚生労働省の官僚が現場の声に耳を傾けることなく机上で考え出したものの典型例と言えます。

 私は、現在、衆議院小選挙区の民主党総支部の総支部長として地元で活動していますが、この他にも私のもとには、「医療崩壊」とも呼ぶべき状況についての現場からの強い危機感の声が寄せられています。その中でも特に目立つのが医療事故調査委員会の設置に関する危惧の声です。

 私は何人もの医師の先生方とお話をする中で医師のこの問題に対する関心の深さは、一般の国民の想像を超えていることに気づきました。当直時には連続32時間勤務が普通となってしまっている過重労働やそれに見合うだけの十分な報酬を得ることができないことよりも、最善を尽くした場合でも不確実性の高い医療の結果に責任を問われ、場合によっては刑務所に入らなければならないというリスクの方が医師にとって精神的な重荷となっているのです。

 以前、数名の研修医と話す機会がありましたが、彼らは口々に「自分は仕事がたいへんなことは覚悟ができています。ただ、がんばっている私たちの志をくじくようなことだけはやめてください。」と訴えていました。

 医師に対する「はっきり言って、最も社会的常識が欠落している人が多い。ものすごく価値観が違うから。」という首相発言は、まさにギリギリの状態で踏ん張っている現場の医師の気持ちをくじく発言であり許されないものです。リスクをとる職業に対する正当な評価がなければ、なり手はいなくなってしまいます。

 この点において、現在の医療事故調査委員会設置に関する議論は、間違いなく医師へのプレッシャーとなっています。

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