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「定説」と「新説」
『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』を読んで
篠田将(東京大学医学部3年生)

2008/12/05

しのだ しょう氏○現在東大医学部3年生。東京都出身の東京都育ち。身長173cm。血液型はA型。

 突然ですが、こんな事例を見たことはないでしょうか。

 「ある事柄について、定説があったが、そこに新説が提唱され、場合によってはその提唱された新説が定説に取って代わった」。これだけ聞いてもピンと来ないかもしれないので、いくつか具体的な例を挙げてみます。

テーマ1~ジェンナー(種痘)

 定説(伝記などから):ジェンナーは天然痘ワクチンを開発した。そして、自らが作製した牛痘を自分の腕に注射or自分の最愛の息子に注射し(ここは伝記や偉人伝によって違うのですが)、その後天然痘ウィルスを注射して自らの研究成果を証明した。

 新説:ジェンナーは牛痘の臨床試験を行う際、近所の少年(彼は地方の開業医でした)を使って試した。

 コメント:いい話ではなく、(今の倫理を当てはめると)人体実験ではないですか。

テーマ2~国民年金

 定説(世の中で言われている説):少子高齢化によって年金は破綻する。払い損。また、運用は運用の素人である公務員(正確には独法職員)が行っており、大損している。

 新説(調べると):実際の運用は民間の金融機関が行っている(独法職員は事務処理を行っている)。平均すると毎年3兆円ぐらいの運用益を出している。また、年金は150兆円もの積立金が存在し、それは将来への備えであり、もし保険料が1円も入ってこなくなっても5年は年金を払い続けることができる(厚労省年金局websiteから算出)。

 コメント:下手に貯金するより保険料払っていたほうが確実ですね。

テーマ3~江戸時代はどんな時代?

 定説:技術革新が起こらず、また強権的な江戸幕府によって自由が制限されていた。また、幕府の指導者は物事に暗かった。

 新説(昔から言われていたことですが):確かに軍事的な分野での技術革新は起こらなかったが、春画などを見れば明らかなとおり、印刷技術などの革新は驚異的である(今で言うところのカラー印刷)。また、田沼意次の政治方針は、いわゆる重商主義政策(要するに斬新)であった。

 今回読んだ本は、薬害エイズ事件の安部氏についてでした。さて、彼の一般的なイメージ(上での「定説」)はどんなものでしょうか。96年や2004年の報道などから私が当時作り出したイメージは次のとおりです。

 お断りしておきますが、これは当時の私が抱いたイメージをそのままの形で今取り出したものです。誤りや安部氏や関係者の方々に失礼な内容が入っていますがご了承ください。ここより下に出てくる同じような回想シーンも同様です。

 安部という名前の医師がいて、彼は地位が高かった。彼はその地位を利用して、ミドリ十字という製薬会社から個人的に莫大な金を得ていた。また、彼は自らの経済的な利益のために、血友病の治療のために用いられる血液製剤という薬の危険性を知りつつその情報をミドリ十字とともに握りつぶし、またミドリ十字の非加熱製剤が売れなくなることを恐れて、代替の安全な加熱製剤の販売許可を妨害し、加熱製剤の販売時期を遅延させた。その結果として血友病患者は危険なミドリ十字の非加熱製剤を打ち続けることを余儀なくされ、それによりエイズという病気に感染し死亡した。(96年の報道から)

 安部医師に対して東京地裁は信じられないことに無罪判決を出した。それに対して国は控訴し裁判を進めていたが、彼が痴呆になったので、「痴呆の安部医師を刑罰で罰してもしょうがない」という理由で裁判が中止になった。彼は痴呆になって結局は罰から逃げ切った(04年の報道から)

 いきなり話は変わりますが、実は私は今医学生でして、入試の前に「小論文・面接対策」を勉強して、医療にまつわる内容を軽く触ったものです。実際蓋を開けてみたら、私が行っている学校では、小論文は無く面接も合否にあまり考慮されていないそうです。

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