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有床診療所を医療崩壊の救世主に
上塚高弘(熊本県有床診療所協議会理事、第22回全国有床診療所連絡協議会総会準備委員会委員)

2008/10/22

 最近、わが国の病院では、勤務医の先生方が過酷な条件にもかかわらず使命感に支えられて献身的に働かれることにより、かろうじて医療が崩壊するのを防いでいるが、それも限界に近づいているという状況が明らかにされています。そして、わが国にはもう一つ、日本の医療を支えてきながら、その存続が危ぶまれている施設があります。それは有床診療所(以下有床診)です。

 有床診とは19床以下の入院施設を有する医療機関です。戦後、病院を必要な分だけ作る社会的条件が整っていなかった時に、一時的な入院施設として作られたのですが、院長が施設内か隣接した土地に住居を持ち、24時間地域の医療ニーズに応える有床診は日本の風土にマッチし、日本の地域医療の原点となりました。

 厚労省の資料には、なぜか「医師が一人必要な他には何も規制がない」と紹介されていますが、実際には建物には規制があり、特に10床以上の診療所は病院と同様に、病室の広さ、廊下幅、非常口や階段の角度、ドアの開く方向など細かい規定があります。

 スタッフに関しては、昔は看護職(看護師、准看護師)はいなくてもよかったのですが、それでは患者さんの安心が得られませんから、大抵の有床診は相当数の看護職をおいていました。現在は最低1人の看護職が必要になっています。

 入院医療が必要な患者さんの中には、高度な組織医療を行う大規模な施設より、なじみの医師や看護職がいて、家族も見舞いに来易い近くの施設を望んでいる方がおられます。むしろその方が多いでしょう。有床診はそのような患者さんに適しています。

 さらに、十分な経験を積んだ医師が独立して開業するとき、病床は身につけた技量を発揮するのに役立ちます。離島や僻地では有床診が唯一の入院機関という所もあります。また、日本のお産の約半分は有床診が引き受けているなど、有床診は日本の地域医療で重要な役割を果たしているのです。

 しかし、有床診は入院の診療報酬が低く抑えられてきたために経営は困難で、昭和45年には全国で2万9841件あった施設が、最近では毎年約1000施設が病床を閉鎖し、平成18年には1万2858件になっています。特に土地や人件費の高い都会では殆ど姿を消してしまいつつあります。

 現在の有床診の殆どは病棟の収支は赤字で、それを外来の黒字で辛うじて補っている状況です。それなら病棟を閉鎖すればよいようなものですが、地域の患者さんからは入院施設として残して欲しいという要望があり、また、自分がやりたい医療に病床が必要なため、ぎりぎりまで病床を手放さないでいるのです。

 有床診が存続困難になってきたのは、医療法13条で有床診の入院期間が療養病床を除いて48時間以内と規制されていたためです。実際には院長の判断で延長してよいことになっており、診療報酬も48時間に限定せず、無期限に入院料を認めていたのですが、13条の弱みがあるために、入院点数が低く抑えられていても私たちは文句が言えなかったのです。

 しかし、長年の13条撤廃運動が実を結び、19年1月には48時間規制がなくなりました。晴れて正式の入院施設として認められたわけです。われわれは当然入院点数もそれにふさわしいものになると期待していました。しかし、20年4月の診療報酬改定では有床診の入院料は従前と全く変わりませんでした。

 参考までに病院と有床診の一般病床の入院料の比較をしてみます。

 有床診の入院料は、看護職5人以上の「入院基本料1」と、看護職1人以上の「入院基本料2」があります。「入院基本料1」を算定しているところは、実際には殆ど7人以上の看護職を擁していますから、19床でも患者と看護職の比率は3:1以上になります。そこで、患者対看護職の比率が3:1の病院と、有床診の1日の入院料を比較してみます。

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