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マスメディアの「名義貸し」報道から地域医療の崩壊が始まった
上昌広(東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門)

2008/08/18

※今回の記事は2008年4月9日に村上龍氏が主宰する Japan Mail Media JMMで配信した文面を加筆修正しました。

 医療崩壊は我が国の大きな社会問題となっています。マスメディアで医療崩壊、医師不足の話題が報道されない日はありません。

 政府・与党は、昨年の参議院選挙前には緊急的に医師確保、医師派遣といった対策を打ち出しましたが、医師派遣はわずか6人にとどまり、焼け石に水でした。また、医師不足に悩む地方都市が高額の給料を提示し、医師を招聘していますが、上手く行っているという話は聞きません。

 どうして、政府・与党が必死になっても、この問題は解決できないのでしょうか。それは、医療システムは複雑で、医療問題を解決する特効薬などないからです。医療崩壊を食い止めるには、医療に関係する全ての人が正確に現状を認識し、納得がいくまで議論し、コンセンサスを作り上げなければならないのです。

 「法律で決まっている」「欧米では・・・となっている」のような、他者に規範を求めることは短期的な合意形成には有効ですが、現状と適合していなければ、やがて破綻します。

 私たちの研究室では、マスメディア、厚生労働省や刑事事件など医療周辺の動きと委縮医療、我が国の高齢化を含めた医療需要の現状分析と将来推計、諸外国と比較した場合のわが国の医療提供体制に関する現状分析と将来推計など、多岐にわたるデータから現状を見据えたうえで、主に患者の安全性の観点から、必要とされる医療改革について提言を行っています(http://kousatsu.umin.jp/)。

 今回は、喫緊の問題である地方での医師不足の背景を解説し、その対策について議論したいと思います。

■マスメディアの「名義貸し」報道から地域医療の崩壊が始まった
 我が国の医師数は欧米先進国と比較して、著しく少ないことは周知の通りです。2007年のOECDデータでは、トルコ、韓国、メキシコに次ぐ医師不足国です。また、2003年時点の100病床あたりの病院従事者数は、アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア4カ国の平均が439人であるのに対し、日本は101人と、わずか23%に過ぎません。

 このように、我が国の医師数は大幅に不足しているため、医療現場では医師の労働強化という形で対応せざるをえませんでした。

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