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「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」に参加して
木ノ元直樹(弁護士)

2008/08/04

きのもと なおき氏○中央大学法学部法律学科卒業。1988年4月弁護士登録。著書に『PL法の知識とQ&A・改訂版』(単著・2004年11月・法学書院)、『医療事故紛争の予防・対応の実務』(共著・2005年12月・新日本法規)など。

 平成20年7月28日(月)14時から17時まで、日本医師会館大講堂において「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」が行われた。討論会を傍聴した感想を述べたい。

 私自身は、あらかじめ質問書を提出して、質問をしようと準備していたのだが、なかなかその機会に恵まれそうもない状況で、会場から患者側のS弁護士がいきなり発言を始めたのに反応し、S弁護士と少しやりあって終わってしまった。

 残念ながら不完全燃焼であったが、それはひとまず置くとして、総括した結論を述べれば、厚労省が公開した「法案大綱」反対論の説得力が明らかに優勢であったということに尽きる。

 医療側の推進論の基礎がどこにあるのかもよく理解できたが、残念ながら、推進論の根拠は客観性に乏しいとともに、積極的に重大な問題を発生させるということがより鮮明となった。

 何がより鮮明になったのか。それは、医師法21条を改正すれば事足りるという誤った考えが、多大な副作用、悪反応をもたらすということである。

 「医師のみが刑事司法の対象で弱い立場」という発想を転換し、検察・警察に対しても堂々と対峙しないと所詮何をやっても駄目である。「法案大綱」推進論の路線ではこれが全く見えていないのである。

 大野病院事件における警察の逮捕は、逮捕した警察官、勾留を続けた検察官らに「特別公務員職権濫用罪」(刑法194条)が成立するという前提で、積極的に医療側が刑事告発をしていくべきなのである。これで捜査機関がまともに動かなければ、捜査機関の不公正な怠慢を糾弾していくことが必要である。

 勿論、民事的には国賠法の問題も出てくる余地がある。何が業務上過失の「過失」なのかという議論とセットで、何が特別公務員の「職権濫用」となるのかという議論を突き付けるべきなのだが、日本救急医学会の堤先生の発言を除いては、この本質論にまで意識された発言はなかった。

 ところが、大野病院事件ショックと言うべきか、医師のみが捜査のターゲットだという過剰反応が、藁をもつかむ意識を蔓延させ(これは医師会をはじめ、各医学会共通のコンセンサスであったのではなかろうか。)、医師法21条をいじれば大野病院事件のような悪夢はなくなるなどという迷信を生んでしまったのである。

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