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医薬品等の安全性確保のためにレセプトデータの有効的な活用を!
山口拓洋(東京大学大学院医学系研究科臨床試験データ管理学特任准教授)

2008/07/31

やまぐち たくひろ氏○1994年東大医学部卒業。医薬品医療機器審査センター(現医薬品医療機器総合機構)生物統計担当審査官などを経て2007年より現職。専門は医学統計学、医学研究方法論。

●はじめに
 2006年1月に総務省IT戦略本部より「IT改革戦略」が発表され、医療分野においては、診療報酬請求レセプト)の完全オンライン化の実現、さらに、厚生労働省によるレセプトデータの学術的・疫学的利用の推進が謳われています。

 現在、薬害肝炎事件の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実態について、多方面からの検証を行い、再発防止のための医薬品行政の見直し等について提言することを目的として、舛添要一大臣のもと2008年6月に厚生労働省医薬食品局に「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が設置され議論がなされているところですが、ここでの議論でもあがっているように、レセプトデータを医薬品等の安全性確保に利用することは極めて重要かつ有効な手段です。

 一方、2007年7月に厚生労働省保険局に設置された「医療サービスの質の向上等のためのレセプト情報等の活用に関する検討会」において、レセプト情報等を医療サービスの質向上等のためにどう活用すべきか検討されてきましたが、その報告書によると、厚生労働省が今後実施する施策には、医薬品等の安全性確保という観点からはいくつか課題があると言わざるを得ません。

●国を挙げての大規模レセプトデータベースの構築
 電子化されるレセプトには、患者の性、年齢、医療機関(薬局)コード、レセプト原本に記載された全傷病コード、全診療行為コード、調剤日及び全ての薬剤コード(調剤レセプト)が含まれています。これらの情報をもとに、2011年度までに大規模なデータベースの構築が進められており(ナショナルデータベース構想)、世界で最大の薬剤使用に関するデータベースが構築されることになります。

 既に欧米には、保険請求などの大規模なデータベースが何十も存在し、医薬品の使用状況、副作用なども含めた患者の健康状態などがデータ化されていますので、市販後の医薬品に安全性対策に重要な役割を果たしています。

 一方、日本にはこれまで医薬品等の安全性確保のための大規模データベースは存在しませんでした。医薬品等の安全性に関する懸念を迅速に、科学的かつ効率的に確かめる情報基盤(インフラストラクチャ)の整備が進んでいないのです。

 実際には、医薬品医療機器総合機構には自発報告に関するデータベースが存在しますが、自発報告制度のみでは医薬品の安全性確保、特に、未知・重篤な副作用の検証には限界があります。

 自発報告される副作用は、実際に発生した副作用のごく一部にすぎないことが知られていますし、マスコミなどで報道されると、報道された副作用の報告率が大きく跳ね上がることもよく知られています。

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