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厚労省案の総括と民主党案の分析
民主党案を支持する
満岡渉(諫早医師会理事)

2008/07/22

 昨年11月の九州医師会医学会以来、明けてもジコチョー、暮れてもジコチョー、寝ても覚めてもジコチョー、ジコチョーである。憑かれたように医療事故調問題にはまり込んでいるが、何故こんなことになったのか自分でも分からない。人が変わったといわれる。元来ボーっとした人間だったのが、この半年はずい分戦闘的になったような気がする。

 でもあと半年経ってこの騒動が終わった頃には、前にも増してボーっとしていることだろう。魂のぬけ殻になって、県の広報委員も諫早医師会の理事も辞めているかもしれない。

 しかし、今はまだ、魂は抜けてはいない。本稿では、厚労省案の総括ならびに民主党案の分析を行い、両者の優劣を考えてみたい。

 筆者は、厚労省が法制化しようとしている医療安全調査委員会(=医療事故調査委員会、以後本稿では「事故調」で統一する)は、医療従事者の責任追及機関として機能すると確信している。

 厚労省案は、昨年10月の第2次試案、今年4月の第3次試案を経て、6月の大綱案に至るまで何回か形を変えてきた。しかし一貫して変わらないのが、診療関連死の届出を強制し、事故調が調査をして問題の有無を判定し、重大な過失があればこれを警察に通知するという枠組みだ。事故調査と責任追及を連動させているのが、厚労省案のもっとも本質的な問題点である。

 以下に挙げるような問題点も、すべてこの「責任追及のための事故調査」という枠組みに起因している。簡単に述べる。

(1)処罰を前提とした調査では科学的な事故原因の究明ができず、科学的な原因究明がなければ事故の再発防止もできない。これは世界の常識である。

(2)厚労省案の本丸は刑事より民事だと看破する人も多い。厚労省案の枠組みでは、一定の条件の下で診療関連死が自動的に事故調に送られる。事故調は問題の軽重を判定して報告書を作成するので、この報告書は当然権威ある「鑑定書」として機能する。つまり診療関連死に対して自動的に鑑定書が発行される仕組みなのだから、少し考えれば、民事紛争が激化することは誰にでも想像がつく。

(3)行政処分が増え、厚労省の権限が強化される。厚労省は、システムエラーという言葉を巧妙に医療機関の責任追及にすりかえている。しかし、システムエラーの根源には医療費削減とこれに伴う医療従事者の不足や加重労働という制度上の問題があるのは明らかであり、ここに目をつぶって安全対策の強化を求めても医療機関は疲弊するばかりである。

 なお、第2次試案、第3次試案、大綱案と、厚労省案も次第に良くなっている、などという人がいるが、それは間違っている。

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