日経メディカルのロゴ画像

未承認薬による重症合併症は如何にして克服されたか
ボルテゾミブによる肺障害を考える
成松宏人(日本対がん協会がん対策のための戦略研究推進室室長補佐)

2008/07/18

なりまつ ひろと氏○1999年名大医学部医学科卒業。2008年名大大学院医学系研究科分子細胞内科学(血液・腫瘍内科学)修了。2008年4月より現職。

●はじめに

 ボルテゾミブ多発性骨髄腫に対する有望な新薬である。治験や個人輸入で投与された患者に致死的肺障害が生じ、社会に大きな波紋を呼んだことは記憶に新しい。しかしながら、最近公表された市販後調査の中間報告によると、市販前に問題となった肺障害の頻度は激減していた。本稿では本邦におけるボルテゾミブに関連した肺障害に関する学術報告・報道をレビューし、肺障害の頻度の推移と、それに関係する要因を調査した。

●ヤンセンファーマによる治験

 ボルテゾミブは2003年5月、米国Food and Drug Administration(FDA)にて承認された。日本では2004年5月よりヤンセンファーマ株式会社によって、多発性骨髄腫に対するボルテゾミブ単独投与の治験が開始された。

 17番目の登録症例がボルテゾミブ投与後に肺障害を起こし死亡したため、症例登録が休止された。この後、第三者評価委員会での協議の結果、CT等の画像検査にて肺に異常が認められる患者を治験から除外することにして、症例登録を再開した。(1)

 最終的に治験には34例が登録され、肺障害を発症したのは1例だけであった(3%)。全例で、ボルテゾミブ投与時にステロイドは併用されておらず、ほとんどの患者はkalnofsky performance statusが80%以上と全身状態が良好であった。(2)

●個人輸入薬の投与例における自主報告

 2005年10月、虎の門病院血液科宮腰重三郎医師(現東京都立老人医療センター血液内科)たちはボルテゾミブ投与時に肺障害を繰り返した症例を経験し、薬剤性肺障害の可能性を疑った。

 彼は友人の研究者にe-mailや携帯電話で連絡したところ、同様の症例が発生していることを知った。ただ、宮腰医師が勤務する施設以外では、肺障害を繰り返した患者はいなかったため、肺障害は薬剤よりも原疾患と関連すると考えられていた。

 宮腰医師を中心とした研究グループが、2004年1月から2005年9月までの間に、個人輸入で入手したボルテゾミブを投与された13例の治療記録をretrospectiveに調査したところ、4例(31%)に重篤な肺障害が生じ、うち2例(14%)が死亡していることが明らかとなった。

 肺障害を起こした4例は、いずれもステロイドは併用されていなかった。この4例についてのPS、肺障害を発症しなかった9例の臨床情報は公開されていない。

 2005年10月、宮腰医師らはボルテゾミブによる肺障害の可能性についての第一報を、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、ヤンセンファーマ、輸入代行業者RHCUSA Corporation, Tokyo, Japan)に送った。

 PMDAは、ヤンセンファーマに対して、治験参加患者に重症肺障害が出現していることを公表し、医療現場に情報提供することを要請した。従来、治験登録患者に発症した副作用情報は治験参加施設以外には公表されなかったが、PMDAの要請をうけ、2007年10月24日、ヤンセンファーマは自社のホームページ上で情報を公開した。

この記事を読んでいる人におすすめ