日経メディカルのロゴ画像

「厚生労働省第三次試案に関する日本医師会の見解」についての意見書
日本医師会会長への手紙
高原晶(諫早医師会会長)

2008/06/12

たかはら あきら氏○1979年関西医大卒業。1995年高原内科循環器内科医院開業。2008年諫早医師会会長。医学博士、内科専門医、循環器専門医。

 われわれ諫早医師会は、本年1月23日付けで、厚生労働省が発表した「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案(第二次試案)」ならびに自民党が発表した「診療行為に係る死因究明制度等について」において創設が謳われた「医療事故調査委員会(医療安全調査委員会)」に対する反対意見書を、日本医師会に提出いたしました。

 4月3日、厚生労働省は「医療の安全の確保に向けた医療事故の死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案(第三次試案)」を発表し、これを受けて日本医師会でも「厚生労働省第三次試案に関する見解」を出されましたので、これに対して改めて意見具申させていただきます。なお本意見書は、5月6日付けで当医師会が厚生労働省に提出したパブリックコメントを下敷きにしております。

 第三次試案では、第二次試案に比べ、医療死亡事故の届出の範囲を限定するなどの見直しがなされたものの、医療安全調査委員会の調査に基づいて故意や重大な過失のある事例などは捜査機関に通知するとされており、最大の問題点であった調査と刑事処分とを連動させる仕組みは変更されておりません。

 また調査報告が行政処分に直結し、民事手続きに活用される点もそのまま残されています。事故調査の領域では調査結果を不利益処分に用いないことが国際的常識であるにもかかわらず、この枠組みに変更がないのであれば、この制度の目的が理念としては原因究明と再発防止であろうとも、実質的に医療従事者の責任追及のために機能することは明白です。

 われわれを含む多くの関係者がくりかえし訴えてきたように、事故原因の調査と責任追及とは独立した組織で行なわれるべきであり、日本医師会はそのように主張すべきです。

 故意・悪意をもって行なわれたのではない医療事故は、刑事罰の対象から外すべきであるというのは、医療従事者にとって究極の願いですが、そのためには国民的議論を踏まえた大がかりな法改正が必要で、相当の年月を要します。

 したがってわれわれは、次善の目標として、捜査機関が医療事故に対して最大限に謙抑的に対応することを望みます。日本医師会が、「医師法21条に基づく死亡事例の警察への届出義務から始まる刑事訴追への誤った仕組み」を正して、警察ではない「新たな届出先として中立的な第三者機関である医療安全調査委員会」を設置すべきであるとしているのは、まさに医療への刑事司法の介入をできる限り抑制するためと理解しております。

 しかし、そうであるならば、医療安全調査委員会の調査と判断が警察・検察よりも優先することが法的に担保されていなければなりません。実際、これまで日本医師会は、新制度では「警察は(医療安全委員会から)通知された事例に限って、捜査を開始する」「警察に通知されなかった事例は刑事訴追の対象とはしない」と説明し、警察庁や法務省との間にこうした約束が「明文化されている」と言明してきました(日医ニュース第1117号)。

 ところが、本年4月4日の衆院厚生労働委員会での岡本みつのり議員の質疑や、4月22日の衆院決算行政監視委員会での橋本岳議員の質疑で、第三次試案に示された医療安全調の捜査機関に対する優先性は単なる口約束に過ぎず、法的な根拠はもちろん、厚労省と警察庁・法務省との間の合意文書など一切ないことが明らかにされました。

この記事を読んでいる人におすすめ