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周産期医療の崩壊から見た医療再建の道
新生児の生命と日本医療の未来
田口空一郎(構想日本政策スタッフ、東京大学大学院医学系研究科医療倫理学講座客員研究員)

2008/06/12

 ここ数年、「産科医の不足」や「産科施設の分娩取り扱い中止」、また「妊婦のたらい回し」や「産科医の逮捕」といった出産にまつわる医療問題が連日マスメディアをにぎわせている。

 今年4月14日に国立成育医療センターを視察した福田総理も、こうした問題を受けて、「来月中に、産科や小児科の勤務医を増やすための具体的な目標、そのための方策を盛り込んだビジョンをとりまとめ、政策にしていきたい」と自らのメルマガで述べ、その財源として来年度一般財源化を予定している道路財源を充てる、と明言していた。

 しかしこうした総理の指示があったにも関わらず、また舛添厚労大臣の医師養成数増員の強い意志表明にも関わらず、大臣の諮問機関「安心と希望の医療確保ビジョン」会議での医師養成数増の議論はトーンダウンを見せ、女性医師の活用や医師配分の見直し、医療従事者の間の業務分担の推進といった、既に医療現場が長年にわたり取り組んできたような対策案を示してお茶を濁そうとしている。

 もし厚生労働省が、こうしたその場しのぎの議論で事態の収束を図ろうとするならば、出産にまつわる医療、すなわち周産期医療の「崩壊」とまで形容される窮状を打開することは根本的に不可能だろう。はたして総理が明言した「具体的な目標」に基づく対策は出てくるのだろか。

 ところでこの周産期医療とはそもそも何であり、そこにはどういった制度的問題あるのだろうか。またその問題の解決のためにはどういった方策がありうるのだろうか。以下、その概要を追いながら、医療制度全般にも及ぶような問題構造を明らかにし、医療再建のためのひとつの方向性を指し示したい。

■周産期医療とは
 まず「周産期」とは、正式には胎児の在胎22週以降から出生後7日までの出産前後の期間を指し、その期間の母体および胎児・新生児に対する医療を「周産期医療」と呼んでいる。

 しかし早産児(低出生体重児、いわゆる未熟児)の救命率の上昇とともに長期入院児が増加し、出生後7日以降の新生児なども医療の対象とするようになったため、大きく「出産前後の母子を対象とする医療」と表現するのが周産期医療の適切な定義といえるだろう。

 この周産期医療には、主に分娩や妊婦の管理を行う「産科医療」と、主に早産児および流産児のNICU(新生児集中治療室)等での救命・治療を行う「新生児医療」がともに含まれており、医療が非常に高度専門化した現在では、特に3次周産期センターと呼ばれるような大病院において、両者は不可分な形で相互に連携し、一体的な医療を提供しているといえる。

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