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厚生労働省第三次試案に関する日本医師会の見解についての意見
野村麻実(国立病院機構名古屋医療センター産婦人科)

2008/06/04

のむら まみ氏○1998年名古屋大医学部卒業。名古屋大学病院、津島市民病院などを経て、2007年から国立名古屋医療センターに勤務。産婦人科認定医。医学博士。

 先日5月28日、日本医師会の定例記者会見において厚生労働省第三次試案に関する日本医師会の見解が木下常任理事より示されました。

 その席上、見解内の「警察庁・法務省に対しては、参議院決算委員会での両刑事局長による「試案の内容は厚労省と合議し、了解している」との答弁の通り、文書は交わしていないが、試案の記載内容の遵守を求めていく。」という一文に、記者から「『明文化されている』と日医ニュースに書いていたはずですが」との質問をうけ、木下理事は「ああ、ちょっと行き過ぎた書き方をしてしまったかもしれない。お詫びします」と謝罪されたそうです。

 木下理事はこれまでも医師会の代表として医療安全委員会についての説明を何度も行ってきました。どのように厚生労働省に説明を受け、どの時点の部分までが誤解や嘘だったり希望的観測だったり、だまされていたのかはわかりませんが、これでは医師には真相がわかりません。

 今後、日本医師会の言うことをどの程度なら真に受けていいのか迷うところです。信用が失墜するのは間違いないでしょう。いまさら謝罪されても仕方無いのですが、誤った説明を元にとったアンケート結果であるならば、また一から説明をやり直し、アンケートを取り直すのが筋ではないでしょうか。

 日医見解提出の日付をみると、定例記者会見の前日5月27日であり、「出してしまったから、もう大丈夫」との確信的謝罪であったと感じずにはいられません。

 さて円満にまとめられたようにみえる日本医師会の見解ですが、本来であれば、4月22日都道府県医師会担当理事連絡協議会で決定され、発表される予定でした。「「種々の問題はあるが、それらが解決できれば賛成」という医師会を含めて36医師会(77%)、「第三次試案に基づき制度を創設すべきでない」は7医師会(15%)、その他4医師会(9%)」の数字もその時点ですでにでていたのです。

 しかし会議はまとまらず、何度かの会議の末、最終的には5月24日にFaxで見解を各都道府県支部に送りつけ、「問題点があれば翌日までにファックスで回答を」という結果で現在の形になりました。

 このようにまとめられた「厚生労働省第三次試案に関する日本医師会の見解」ですが、かなりつっこみどころ満載で楽しい見解となっています。

 冒頭の「医師法第21条による異状死の解釈問題に関して、都立広尾病院事件における平成16年4月13日の最高裁判決は「死体を検案して異状を認めた医師は自己がその死因等につき診療行為における業務上過失致死罪の罪責を問われるおそれがある場合にも、本件届出義務を負うとすることは憲法第38条1項に違反するものではないと解するのが相当である。」との判断を示すことで決着した。」には異論がありませんが、医療安全委員会を作らなくても医師法21条をかえることは可能なのではないでしょうか。医療安全委員会なしでは医師法21条を変更できないという前提が私にはわかりません。

 また、「医師法第21条による医療事故による死亡事例の警察への届出義務から始まる刑法第211条の業務上過失致死罪を適応する仕組みが続く限り、(略)医療崩壊に拍車がかかることは必定である。」の部分ですが、「医師法第21条による医療事故による死亡事例の警察への届出義務から始まる」を削除するとした方が本質が見えてすっきりすると思います。

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