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イギリスにおける診療関連死への警察介入に対するガイドライン
関根利藏(葛西循環器脳神経外科病院・内科)

2008/05/28

せきね としぞう氏○1988年神戸大医学部卒業。国立国際医療センター戸山病院内科、東京医科歯科大学付属病院循環器内科、オランダ・エラスムス大学メディカルセンターを経て2006年より現職。

 日本でも議論となっている診療中の「予期せぬ死亡」と「重大な障害」について、イギリス保健省が2006年にガイドラインを作成しています。

 Guidelines for the NHS: In support of the Memorandum of Understanding- Investigating patient safety incidents involving unexpected death orserious untoward harm

 このガイドラインには、「わかりやすい覚書」(Memorandum ofunderstanding: Investigating patient safety incidents involvingunexpected death or serious untoward harm)も掲載されています。

 その序言には、「イギリスでも以前は診療関連死が起きた場合は当事者である医療従事者を処罰する方向でしたが、処罰を前提にすることで他の医療職や医療機関が今後の診療に役立てる為の大事な情報が出てこなくなり、むしろマイナスに働くことがわかってきました。そしてNational Patient Safety Agencyへの診療関連の有害事象報告が、報告者を罪に問わないという条件でなされるようになりました。」と記載されています。

 また、有害事象の報告に関するNational Health Service (NHS)ガイドラインも別途作成されています。具体的には、「予期せぬ死亡」と「重大な障害」の報告の中には警察の介入を認める事例があり、どんな事例が警察の介入を認めて、どのような手続きが取られるのかも、詳しく述べられています。

 イギリスにおける予期せぬ診療関連死への警察の介入は、日本のように一方的に警察が資料の全てを押収して検察に送検して、検察が独自の医学判断をして刑事事件化するシステムとは根本的に違っています。

 まず始めに、医療機関であるNational Health Service (NHS)、警察当局Association of Chief PoliceOfficers、医療安全システムの政府部局Health and Safety Executive(HSE)の3者が話し合いをして、調査していきます。

 その際に、複数の臨床の専門医と医療安全の専門家が必ず調査チームに加わります。このチームは個々の事例ごとに召集されるので、参加するメンバーも違ってきます。

 そして、警察の介入の検討を要する症例とは、ガイドラインの文言を引用すると、

*evidence or suspicion that the actions leading to harm were intended
(意図的に障害を起こす診療行為をした証拠あるいは疑いがあるもの)
*evidence or suspicion that adverse consequences were intended
(意図的に有害な結果を起こした証拠あるいは疑いがあるもの)
*evidence or suspicion of gross negligence and/or recklessness in aserious safety incident, including as a result of failure to follow safepractice or procedure or protocols.(安全な診療手技やプロトコールに従わなかった結果、重大な事故につながった怠慢あるいは無謀な治療である証拠あるいは疑いがあるもの)

 とされています。それ以外の診療行為における予期せぬ死亡はHSEの中で処理され、当然のごとく警察の介入の検討とはならず、有害事象報告者も免責されます。

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