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第三次試案への報道論調に危惧を覚える
野村麻実(国立病院機構名古屋医療センター産婦人科)

2008/05/26

のむら まみ氏○1998年名古屋大医学部卒業。名古屋大学病院、津島市民病院などを経て、2007年から国立名古屋医療センターに勤務。産婦人科認定医。医学博士。

■はじめに

 4月に厚生労働省から出された「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-」いわゆる第三次試案への各学会からの声明や意見が続々と発表されています。司法界や医療界、国会の場でさえさまざまな制度不備の指摘や議論をうけ、現場の半数以上の医師が反対を示している試案ですが、学会のお偉方がどのような反応をされるのか、成行きを注目しているところです。

 ところが各学会の反応は芳しくありません。報道には『「日本内科学会は「賛成」を表明 死因究明制度・第3次試案」Japan Medicine 2008.5.7』、『「3次試案、都道府県医師会の8割が賛成 日医が調査」日刊薬業2008/04/28』、『「厚労省:「医療事故調」案 日病協が賛成」毎日新聞2008年5月14日』などの見出しが躍り、各学会はすっかり第三次試案を支持しているのかと絶望しきっていましたが、Japan Medicineの記事の副題に「日本産科婦人科学会 現時点で条件付き賛成へ」をみつけてようやく報道との齟齬を納得しました。

 「産科医療のこれから」というブログで精力的に学会の見解を集めていらっしゃる僻地の産科医氏より情報提供いただきましたので、報道各社との齟齬について説明していきたいとおもいます。

■内科学会は「第三次試案に賛成」しているのか

 内科学会の意見書はHPでも公開されており、内科系13学会合同での声明となっています。その中で「賛成」という言葉が使われているのは、(引用が長くなりますが)「医療関連死を届け出る中立的第三者機関を設置すること、および警察による捜査に先行して、医療専門家が公的かつ主体的に事案を審査する体制の確立が必要である。これらの点から考慮すると、本第三次試案に述べられた中立的第三者機関は、上記1)および2)に対する方策としては意義があると考えられ、その設置に賛成する。しかしながら、運用体制をはじめとする詳細については、第三次試案には不明確な点があるため、今後、現場の意見を十分に踏まえて、検討が必要である。」という部分のみですが、実際には第三次試案によって「警察による捜査に先行して、医療専門家が公的かつ主体的に事案を審査する体制の確立」はされていないのが第三次試案の現状(前項「刑事捜査抑制の保障無し―法務省・警察庁は文書を明確に否定」参照 )であって、内科学会が賛成しているのはその設立理念だけといえます。むしろ全文を読んでいただくと、問題点の列挙の多くが的を得ており、厚生労働省の提案のほとんどが問題があると指摘、あるいは否定された意見書となっています。

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