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福島県立大野病院事件 第14回公判傍聴記
堂々結審。司法だけでなく、立法にも覚悟を迫る弁論
川口恭(ロハス・メディカル発行人)

2008/05/19

 福島は快晴。ここ数回と同様、福島駅から裁判所まで歩く。さわやかな初夏の趣で大変気分がよい。

 凍えながら開廷を待った時期が二度あったなあ、初公判から1年以上経ったんだなあ、としみじみ感慨にふける。

 法廷に入ってみると、S検事は残っていたものの、検察官の顔ぶれがまた変わっていた。初公判の時からは総入れ替えされたことになる。開廷前に平岩主任弁護士から検察側に弁論のプリントアウトが渡される。全150ページ。他に経過資料。その分厚さに検察官、苦笑い。

 午前10時すぎ、開廷。右陪席判事が女性から男性に交代していた。裁判官も初公判の時から残っているのは左陪席の1人だけ。淡々と進行され、弁護側最終弁論。

 結論は

「被告人は、業務上過失致死罪および医師法違反の罪のいずれについても無罪である」

 業務上過失致死罪については、多くの証人に対する尋問が行われ、その模様もご報告してきた。結局その繰り返しなので多くは語らない。検察側に立証責任があるのだけれど全く立証できていないということ、重ねて、むしろ検察の立証は虚構というべき次元のものであることを一つ一つ証拠を積み上げて完封勝利した感がある。これで有罪が出たら、本当に医師なんか怖くてやってられないと思う。

 問題は医師法違反の方である。検察のメンツを立てるため、こちらだけ形式的に有罪にするという判決は、法律家の相場的にはある話らしい。しかし、そんな判例を作られてはたまらない。証人尋問が特に行われなかったこともあり、どんな主張をするのか興味津津だった。実に堂々たる弁論で大いに感銘を受けた。

 「検察官は、被告人が死体に異状があると認めたにもかかわらず、24時間以内に所轄警察署に届出をしなかったとして医師法21条違反であると主張する。しかし、本件死体には客観的に異状が認められない。しかも被告人の医療行為には過失がないので、検察官の指摘する裁判例の基準、厚生省のリスクマネジメントマニュアル作成指針、大野病院の安全管理マニュアル、いずれによっても医師法21条の構成要件に該当しない。さらに主観的にも被告人には異状の認識がないので構成要件または故意を欠いている。

 仮に該当したとしても、職責ある公務員である院長の被告人に対する指示を考慮すると、被告人が医師法21条に反しないと考えたことには正当な理由がある。そのような状況下で被告人に届出を期待することは不可能であるから、犯罪は成立しない。

 さらに、そもそも医師法21条は憲法31条および憲法38条に反し、違憲無効である可能性が極めて高い。違憲無効の法律によって人を処罰することはできないのであるから、構成要件該当性や責任の有無を考慮するまでもなく、被告人は無罪である」

(中略)

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