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「第三次試案」に対する意見について
「医療安全調は百害あって一利なし!」
高原晶(社団法人諫早医師会会長)

2008/05/15

たかはら あきら氏○1979年関西医大卒業。1995年高原内科循環器内科医院開業。2008年諫早医師会会長。医学博士、内科専門医、循環器専門医。

 われわれ諫早医師会は、「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方-第三次試案-」(以下第三次試案)に下記の理由で反対する。

(1)第三次試案に計画される組織では、医療事故の原因究明が困難になる。
(2)第三次試案では、医療従事者の不当な刑事処分が減るという保証が全くない。
(3)第三次試案では、医療の民事紛争が激化する可能性が高い。
(4)以上により、患者・医療者関係の軋轢は増し、医療現場は萎縮・荒廃する。

 そもそも第三次試案の目的は「医療の安全の確保」であり、そのために「死亡事故について、その原因を究明し再発防止を図ること」だという。この点についてわれわれはまったく異論はないが、より重要なことはわが国の医療システムそのものを守ることであろう。医療が崩壊してしまっては、もはや医療事故の原因究明・再発防止の意味もないからである。

 ひるがえって現下のわが国の医療、とりわけ産科、小児科、救急医療等の現場が崩壊の危機に瀕していることは、誰の目にも明らかである。具体的にはこれらの医療現場では、十分な予算の手当てや人員配置もないまま、多くの医師が労働基準法違反の過重労働を強いられており、過剰な安全要求と理不尽な訴訟に萎縮し、士気を失って立ち去り続けている。

 さらに深刻なことに、このように過酷で訴訟リスクの高い医療分野の窮状を目の当たりにした新卒の医師がこれらの分野を忌避し、後継者が途絶えようとしている。

 いわゆる医師不足問題は、絶対数の不足のみならず、このようなハイリスク分野からの医師の立ち去りが大きな原因であり、厚労省はこの事実に目を背けるべきではない。したがって新設される組織の制度設計においては、不当な刑事訴追は言うに及ばず、民事訴訟についてもそのリスクが増えることのないよう、特段の配慮がなされるべきである。

 これは医療従事者の保身のために言うのではない。医療が崩壊して困るのは誰よりも国民である。われわれは、第三次試案に示された新しい制度が、医療事故の原因究明を困難にするばかりでなく、訴訟リスクを増加させ、わが国の医療崩壊を加速させる可能性が高いことを真剣に危惧する。

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