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「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-」に対する意見について
森田茂穂(帝京大学医学部附属病院副院長)

2008/05/14

もりた しげほ氏○1974年東大医学部卒業。現在帝京大学医学部附属病院副院長、東京地方裁判所:医療機関弁護士会及び裁判所との協議会の幹事会委員、千葉地方裁判所:千葉県医事関係裁判運営委員会委員。

 「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方」は、医療従事者および患者遺族を含めた国民にとって重大な問題であり、厚生労働省第三次試案に対して様々な考えがあると存じます。

 国民一人一人が次世代の発展のために将来のゴールを設定し、様々な意見を出すことは健全な立憲民主主義の基礎であります。今、個人としてそのために何をすべきか、意見を表明する時期であると考えます。

 医療安全調査委員会(仮称)の設立は、医療者側だけでなく患者遺族側にとっても、望ましいことであり、異論はありません。厚生労働省が、我々医療者や患者遺族の立場を十分に配慮し、様々な検討を重ね、医療事故の原因究明と再発防止を目的にする中立的な第三者機関である医療安全調査委員会を設立すると明言されたことに対して敬意を表します。

 第三次試案には、これまでの試案に対しての医療関係者からの多彩な意見に応え、医療関係者の懸念を取り除く表現や配慮をして頂いています。しかしながら、記載内容を詳細に検討してみますと、法的あるいは実務的な裏付けが欠けている記載が見うけられ、さらにいくつかの論議を要する問題点があると思われます。

 今後、これらの問題点に対し厚生労働省が法務省や警察庁など関連省庁と協議をされ、その結論を試案に明記して頂かなければ、このままの形では賛同できません。

 以下に問題点をまとめますので、ご検討頂ければ幸いと存じます。

(1)医療関係者の責任追及:段落番号(7)
(2)届出:段落番号(16)以降
(3)医師法21条:段落番号(19)他
(4)重大な過失:段落番号(40)
(5)医療安全調査委員会(仮称)の設置場所:段落番号(8)

1)医療関係者の責任追及

 第三次試案(平成20年4月)の2ページに(7)「委員会は、医療関係者の責任追及を目的としたものではない。」とありますが、元来、厚生労働省には、責任追求の権限はありません。責任追及は、警察、検察、裁判所の業務です。

 調査委員会がまとめた調査結果に基づき、調査委員会が捜査機関へ通知すれば、その通知を捜査の端緒とし、警察や検察が医療関係者の責任を追求する可能性は否定できません。

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