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モデル事業で遺族の多くが納得していない
「調査委員会ができれば訴訟は減る」に騙されるな
野村麻実(国立病院機構名古屋医療センター産婦人科)

2008/05/07

のむら まみ氏○1998年名古屋大医学部卒業。名古屋大学病院、津島市民病院などを経て、2007年から国立名古屋医療センターに勤務。産婦人科認定医。医学博士。

 医師会は厚労省に騙されている──。4月28日、このようなタイトルの文章を、「MRICメールマガジン」や「日経メディカル オンライン」などの媒体に掲載していただきました。この記事で私は、「調査委員会の結論が出るまで警察の捜査がストップするというのは単なる医師側の誤解だ」と指摘いたしました。なぜなら警察庁は、「遺族の告訴などがあれば、動かざるを得ない」と国会の場で証言しているからです。

 そこで、次に気になるのは、警察が調査委員会の結論が出る前に動く可能性がどの程度あるのか、という点です。厚労省には、そのようなケースは実際にはほとんど起こらないという楽観的な考えがあるかもしれません。しかし、現在行われているモデル事業からは、そういった事態がむしろ頻発する可能性があるという事実が浮かび上がっています。今回の記事では、そのことをご説明したいと思います。

 まずはおさらいです。4月4日に行われた厚生労働委員会での岡本充功議員の質疑において、「これ(調査委員会の調査)が迅速に進まない場合には、遺族の早く解決をしてくれという願いもあれば、当然警察は捜査に乗り出さざるを得ないという理解でよろしいのか」という岡本議員の質問に、米田刑事局長は「おっしゃるとおりでございます」と答えています。調査委員会の結論が出るまで警察の捜査がストップするというのは単なる医師側の誤解だったわけで、第三次試案は、私たち現場医師が医師会から説明されていた仕組みとは大幅に違っていました。

 そうすると、「ならば迅速に医療安全調査委員会が動けばいいではないか」「医療者側がきちんとやりなさい」という声も出てくるでしょう。ところが、実際はそうはいかないことが、皆さんもご存知の「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」で判明しています。この事業は、現在厚労省で検討されている調査委員会の試験運用とも言うべき事業で、平成17年9月1日より開始されており、この2年半ほどの間に計66事例(5月1日時点)を扱っています。

 モデル事業には色々な問題があるのですが、ひとつの問題は終了するまでに時間がかかり過ぎていることが挙げられます。調査結果を遺族に説明するまでに要した期間は、モデル事業中央事務局の最新(5月1日時点)の情報で平均10.1カ月(48例)となっています。モデル事業に関わったある医師に聞きますと、関与した案件2件のうち、1件は家族に結果報告するまで1年6カ月を要し、遺族から「どうしてこんなに時間がかかったのか」とクレームを受け、もう1件も調査開始から1年を超えていますがまだ報告できていないということです。さらに、愛知の例では、モデル事業の途中にご遺族が結局刑事告訴をして打ち切りとなってしまった例がありました。

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