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「第三次試案」に関する日本麻酔科学会の意見について
日本麻酔科学会

2008/05/02

 「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案-第三次試案-」に対する日本麻酔科学会の意見「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方」は、医療従事者・患者遺族を含めた国民にとって重大な問題です。

 日本麻酔科学会としてもこの問題を大きくとらえ、検討するためのワーキンググループを設立し議論を重ねてまいりました。そして、ワーキンググループからの答申を受け、常務理事会、理事会で協議し、理事会全会一致で以下の結論に至りました。

 日本麻酔科学会は、第二次試案に対していくつかの問題点の指摘と提案をさせていただきました。この度改訂されました厚生労働省の第三次試案は、これまでの試案に対しての医療関係者からの批判に応え、医療関係者の懸念を取り除く表現や配慮がみられます。

 第三次試案の主旨が,「原因究明と再発防止にある」という点や「その目的成のために中立的な第三者機関を設ける」という点には賛同の意を表します。そして、その主旨に沿った「医療安全調査委員会(仮称)」の設立は、患者遺族側だけでなく医療者側にとっても望まく,異論のないところです。また厚生労働省が、その実現に向かってさまざまに検討を重ねてきていただいていることに対し、敬意を表します。

 しかしながら、第三次試案を詳細に検討してみますと、このまま法律で規定するには余りに不透明な部分、あいまいな点、制度や法的な裏づけのない事項が存在します。現時点で、この試案に対しこのままの形では賛同をすることができず、今後さらに議論を重ねる必要があると考えます。

 幸い、パブリックコメントという、各分野からの意見表明を募集しておられます。医療の安全には特段の関心を寄せてきた日本麻酔科学会として、その意見を表明することが、国民にとってよりよい制度の確立に向けて有意義なものと考えます。私たちは医療を施す立場であると同時に、常に医療を受ける患者となる立場でもあります。

 私たちに課せられた責任は、私たちの後輩が安心して診療に携われるようにすることであり、それが患者さん、国民にとって望ましい医療体制の提供につながると考えます。

 以下に再度検討して頂きたい事項をまとめます。

<検討事項>

1.医師法21条に関する点:段落番号(19)他
2.医療関係者の責任追及に関する点:段落番号(7)
3.届出に関する点:段落番号(16)以降
4.重大な過失に関する点:段落番号(40)
5.医療安全調査委員会(仮称)の設置場所に関する点:段落番号(8)

1.医師法21条に関する点

 第三次試案の3ページ(19)で、医師法21条の改正に言及しています。医師法21条の元来の趣旨は、犯罪に対し、捜査機関が迅速に対処するためのものであり、犯罪の発見の手がかりとして有用なため、明治時代から存続しています。

 現在問題になっているのは、本来の趣旨や目的から外れて、拡大解釈され、医療関連死にも当てはめられてしまっているため、現場の混乱を招いているものです。その流れの契機となったのが法医学会ガイドライン(1994年)、外科学会ガイドライン(2002年)、厚生労働省からの指示やガイドラインなどであり、これらのガイドラインを撤回すべきと考えます。

 しかし現行法の改正、ガイドラインの見直し等には時間がかかり、とくに現行法の改正には改めて国会の議決を要することから、今回第三次試案に見られる厚生労働省案を基に提出されようとしている法案の内容を十分検討し、国民に不利益をもたらすことがないようなものにすべきであると考えます。

 この混乱を解消するために麻酔科学会としては、医師法21条に第2項を設け、医療関連死は安全調査委員会に届け出ること、を明記する案を提唱いたします。

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