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厚生労働省 第三次試案に強く反対します
黒川衛(全国医師連盟準備委員会発起人世話役)

2008/04/24

くろかわ まもる氏○1985年長崎大学医学部卒業。2007年10月より長崎県西海市真珠園療養所内科勤務医。

 多くの関係者の論議によって、厚労省の試案は修正され、問題点も明確になりつつあります。あと1年、試案で3~4回ほど努力を積み重ね、他省庁との実効的な調整を進める事が出来れば、制度として禍根のないものに近づけるだろうというのが、率直な感想です。

 逆に、今、この第三次試案で良しとすれば、折角の関係者の論議の深まりが中断され、拙速な判断で決めたこの制度によって、医療の問題点は放置され、固定化されてしまうことになってしまいます。

 現実の医療状況は、ますます厳しくなってきています。「医療事故死亡での原因究明・再発防止」に限らず、厚労省が抱える領域には多くの課題が山積しています。医療関連に限っても、地域医療の疲弊、産科救急医療問題、高齢者医療制度、療養ベッドの削減、リハビリ等の診療制限、メタボ検診、医師の技術料抑制、違法な医療労働放置など、いずれの課題も、解決の目途は立っていません。

 第三次試案の問題は、こうした医療行政が抱える絡み合った関連課題の一つであって、孤立した課題ではありません。そして、この問題は厚労省単一省庁の努力で解決できるものでもありません。法務省、総務省等との十分なすりあわせが必要ですし、何よりも政治決断により医療関連予算の適正な予算確保も前提となるでしょう。

 医療事故の原因究明・再発防止を目的とした制度が、結果的に、真摯に救命・診療する医師への懲罰制度となるようでは、萎縮医療が加速し、本来、国民が享受すべき医療は崩壊してしまいます。ですから、医療安全調査委員会の制度は、充分な検討を重ねる必要があるのです。

 第三次試案では、根本的な修正はなく、このままでは患者さんにとって好ましい診療環境には繋がりません。調査委員会の本来の目的である、原因究明、再発防止を、阻害する重大な問題点を、二次試案に引き続き継承しているからです。全国医師連盟(準)世話役として、医療安全調の拙速な新設には反対いたします。

 重大な問題点とは、

(1)【遺族から告訴があった場合には、警察は捜査に着手することになる】と明記されている点(問2の回答2)
(2)調査委員会と捜査機関との情報交換問題(通知の有無とは何か、通知内容が不明、実質的連動)

があげられます。このままでは、医療事故の際、関係者からの証言が得られにくくなり、原因究明、再発防止の目的は果たせません。

 これらの問題点は、いずれも、安全委員会の判断を起訴要件とし、安全委員会等を訴訟前置強制するなど、特別法で安全委員会の位置づけを規定しないことに由来するものです。

 一方、前回の試案から詳細な明示となり改善された部分としては、

(1) 届け出義務違反は、刑事罰ではなく行政処分(行政命令)
(2) 地方委員会に対する黙秘権
(3) 調査終了前の事情聴取機会と委員会の少数意見付記
(4) 施行準備期間の設置

などが、あります。パブリックコメントを含めた多くの関係者の提言により、こうした改善が見られたことを評価したいと思います。

 しかし、上記した重大な問題点が解消されていない以上、これらの修正事項は、不十分な修正にとどまります。

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