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『安心と希望の医療確保ビジョン』第6回会議傍聴記
国の形を変えるそうです
川口恭(ロハス・メディカル発行人)

2008/04/17

 毎回とても勉強になっているこの会議。ご報告が遅れたが、ちょうど1週間前の8日に開かれた。会場に着いてみると、前回まではガラガラだったのに急に超満員。誰か何か言ったのだろうか。

 この日は地域医療について
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  小川克弘・むつ総合病院院長
  草場鉄周・北海道家庭医療学センター院長
  須古博信・済生会熊本病院院長
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の3人からヒアリングとのこと。

小川
 「下北地域は面積でいうと青森県の16%を占めるが、人口は6%しかない。交通事情が悪く、また県内唯一の医学部がある弘前大からも遠い。一方で、むつ市に海上自衛隊の基地があり、六ヶ所村には核燃料サイクル基地があり、東通村に原子力発電所があるというように日本の中でも重要な施設のあるところ。

 下北地域には病院が4つ、診療所が27ある。診療所のうち26はむつ市内に集中している。4病院の病床数は、むつ総合病院が486、川内病院20、大間病院60、むつリハビリテーション病院120。

 青森県全体も下北地域も非常な勢いで少子高齢化が進んでいる。下北地域の分娩取扱施設で常勤医がいるのは、むつ総合病院の3人だけ。ちなみに青森県内における産婦人科医の年齢構成を見ると20代、30代が全体の20%しかおらず、10年後、20年後に大変なことになりそうだ。下北地域は、小児科医もむつ総合病院に3人いる他はむつ市内に開業医が4人いるだけ。

 下北圏域では、下北半島の全市町村が参画する一部事務組合「下北医療センター」が開設者となっている。これは既に昭和40年代から深刻な医師不足に襲われていたため、メイン病院とサテライト医療機関として、医師の派遣受け入れなどを一元的に行う試みであった。しかし、徐々に町村部病院は運営が厳しくなるとともに、医学部定員削減によって大学からも派遣余力が失われ、結果、県による自治医大卒医師派遣に依存した。

 さて、むつ総合病院がこれまでにどのような取り組みをしてきたかであるが、ベッド数は486、医師数59人、うち研修医が15人、看護師保健師助産師が計346人。一日平均外来患者数が1300人、時間外が1日平均38、7人、救急車で来る人が1日平均6、2人ということで、県内でも特に忙しい病院として知られている。1日平均の入院患者数は399、9人、平均在院日数は17日余りだ。

 取り組みを列挙すると、まず人材確保の面から、・圏外医師の積極的確保・職員の給与は2%カットしても医師給与は維持した・定年退職医師に引き続き勤務してもらった・県独自の補助事業としてメディカルクラークを配置した・臨床研修施設の指定を受けたので宿舎整備を進めた・弘前大のクリニカルクラークシップで僻地医療実習を受け入れる・大阪市立大学付属病院の臨床研修プログラムの中の地域保健医療枠の受け入れ・弘前大と後期研修相互協力をしてきた。

 ほかに・下北地域でリハビリの広域支援センターや連絡協議会をつくった・地域連携パスをつくっている・開業医たちの開業動機に関するアンケート調査を行った。これは心ならずも開業という人が一定数いるようだからで、病院に引き留める方策を探るため・指導医養成講座への積極参加・研修医ワークショップの開催・下北救急医療研究会というもので救急隊と顔の見える関係づくりを進める・下北医療研究会で行政も巻き込んで勉強会を開いている。

 むつ総合病院の基本理念は、『信頼』される病院になるということで、下北の医療を医師にとって魅力あるものにしていくため、課せられたミッションは重いが、逆にそれを励みにたゆまない努力をしていきたいと考えている。

 医師不足は絶対数の不足であるから、充足させるには作るしかない。それもかかりつけ医、総合医、一般医と呼ばれる人たちがほとんど養成されていない。専門医ばかり養成されている。

 医師は有効に利用してよいのだが、しかしそれで潰れないために負担軽減も同時に必要。医師でなければならぬ仕事、診断する治療方針を立てるというところに特化させて、そうでない分野は認定看護師、専門看護師、技師を積極的に使うべきだろう。

 そのためには、どこまでが医療行為なのかという整理も必要で、医師法改正も必要だろう。大臣が『革命的変革が必要』とおっしゃったが、まさにそういうことなんだろう。それから予防の強化も必要で、その中でタバコ問題の占める位置は大きいだろう。命にもっとお金をかけることには国民的コンセンサスが必要で、そのためにどうするのかも問われているだろう」

草場
 「若手家庭医の主張と題して話をしたい。私は小川先生の下北半島と海を挟んだ室蘭で家庭医をしている。小川先生も最後に話をされたGPの養成について話をしたい。抽象的にではなく私自身のことを説明しながら、それを通して行政や各界に期待することも述べたい。

 私は京都大学の医学部で学んだ。医学部では人体を細分化して分析することで得られる科学的な知見を臨床に応用することが、王道として教育されており、私もそう教わった。私は元々患者さん全体を見たいと思っていたのだが、学年が進むほど人として患者のイメージが薄れていく現実への恐れが出てきた。将来を考える中で『こころとからだをバランスよく捉えながら、患者に寄り添うような医療は存在しないものか』とかなり悩んだ。

 大学最後の2年間に臨床各科、様々な外部の病院や使節を見学し相談したが残念ながら、そういうものは見つからなかった。ところが本当に偶然、医学の中で科目として存在せずキーワードとしても聴いたことのなかった『家庭医療』という言葉に遭遇し、『これだ!』と後先考えずに北海道へ行くことにした」

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